状態異常共有。

 状態異常共有。


「ははは……いやぁ、まさか、私を取り戻すっていうそれだけのために、イグをつかうとは思っていなかったなぁ……」


 ザコーがイグという名のコスモゾーン・レリックを所有していることは知っていた。

 しかし、使用するための条件が色々と厳しいアイテムなので、

 まさか『自分(ヤマト)のため』に使うとは、マジで思っていなかった。



「愛されすぎちゃっていて、困るぅ」



 などと戯言を口にしつつ、ニィっと微笑みながら、

 ロコに視線を向けて、


「ごめんねぇ、ロコ様……ご覧の通りだから……あなたを守るのは無理でぇす」


「サラっと言ってくれるわね……もっと、こう、回復魔法とか、頑張れない?」


「厳しい感じですねぇ。というわけで……あとは、ご自身で、どうにかしてくださいねぇ」


 ヤマトに見捨てられたロコは、

 視線をイグにうつして、


「交渉が通じる相手……ではなさそうね」


「すでに契約はかわされている。私は私の名誉にかけて、必ず、この契約を果たす」


「……融通のきかないバカは嫌いだわ」


 言いながら、両手に魔力を溜めていくロコ。


 ロコは、相手の出方をうかがわず、

 最初から全力で、


「龍毒ランク15!!」


 強力な魔法をおみまいする。

 すると、


「ほう……すばらしい毒だ」


 毒状態になったイグは、自身の体をむしばむ毒を味わいながら、


「濃厚で、芳醇……貴様の毒は、間違いなく世界最高クラス」


 そう評してから、


「とはいえ、もちろん、まだまだ青い……もっと、もっと、もっと、高純度の毒でなければ、私を絶命させることは不可能」


 イグの自己再生力の速度に、毒の削りが追い付いていない。


 つまり、毒は通っているものの、それだけでは、

 いつまで経とうと、イグを殺すことはできないということ。


 ふいに、イグがニィと笑い、


「ここらで私のスペシャルについて教えてやろう」


(暴露のアリア・ギアス……)


 ロコは、即座に気づいて、耳をふさぐべきかどうか悩んだが、


「私には『状態異常共有』というスペシャルがあってね。状態異常にかかる可能性が高くなるかわりに、状態異常に陥った時には、確定で相手も状態異常にするというブルースリースペシャル」


 話を聞いた方が有益かもしれないと思い、

 イグの言葉に耳をかたむけていると、


「うぐ……っ」


 ロコは、頭を揺さぶられたような衝撃に襲われ、


「か……は……っ」


 その場でバタリと倒れこんでしまった。

 昏睡状態に陥ったロコを見て、

 イグは、


「おや? なぜ、『毒』ではなく『昏睡』に……ああ『毒に対する先天的耐性が異常なほど高い』のか。私の『状態異常共有』は、通せなかった場合、他の状態異常に変異するという特質をもっていてね。まあ、もう聞こえていないと思うが」


 そう言いながら、イグは、

 自身に状態異常を治す魔法を使う。


 『共有』という名のスペシャルだが、常に同じ状態が維持されるというわけではない。


「それでは、契約を果たすとしようか……」


 そう言いながら、ロコを殺そうとして、

 しかし、そこで、




「……ところで、そこのガキ……」




 道端に落ちている『珍しい形の石』を見るような目で、

 イグはゲンに視線を送りながら、


「なんだ、その目は。この私を前にしていながら、貴様の、その殺気はどうしたことだ?」


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