『ヤマト』VS『ザコー』

 『ヤマト』VS『ザコー』


(……わからねぇ。こいつのことが、ここまで理解できないのは初めてだ……)


 こころの中でつぶやいてから、

 ザコーは、グっと顔をあげて、



「……けど、となれば……」



 ヤマトとの不明瞭な対話を経て、

 ザコーは覚悟を決めた。

 リーダーとしての責務を果たす覚悟。


「時間と言葉を重ねるしかねぇよな……」


 そう結論づけて、


「そのためには、やはり『別々でいる』のは得策じゃねぇ。……というわけで……」


 そこで、ザコーは、アイテムボックスから三叉槍(さんさそう)を抜いて、


「手足を刈り、首に縄をつけてでも……連れてかえる」


 そんな決意を口にするザコー。

 ヤマトは、ニィと微笑んで、


「こわいなぁ……キ〇ガイだなぁ……けど……とっても美しい狂気だねぇ」


 そう言いながら、剣を抜く。


 ヤマトとザコー、

 互いに、オーラと魔力を高め合う。


 バチバチと視線が交差して、

 感情がグルグルと渦(うず)をまく。


 ダッ!

 と、両者が、ともに地面を蹴った。


 交差する武。


 すさまじい速度で空間をかけぬけながら、

 互いに、魔法を世界に刻み込む。


 本気で命をぶつけあう両者。


 その光景は、ゲンに、新鮮な衝撃を与えた。


(また次元の違う闘いしやがって……)


 『はるかなる高み』を見せつけられて、

 心がキュっとなった。


 天才たちが織り成す武の共演。

 自分ごときでは、あまりにも恐れ多くて、

 決して混ざることはできない完成されたワルツ。


 そんな高次の対話に興じている両者の間には、

 実のところ、明確な差があって、


 ――ザコーは、


(……おいおい、なんだ、この強さ……)


 ヤマトの強さに対して、思わず冷や汗を流す。


(鋭さがヤベぇ……)


 置いて行かれる。

 すべてにおいて。


 なにもかも鋭敏で、

 『正確にとらえること』は不可能の領分。


「おい、ヤマト……お前、なんで、そんな強くなっている……」


 ヤマトとザコーは、基本的に『互角の強さ』だった。

 万能のヤマトより、戦闘力特化のザコーの方が、

 タイマンでは、ギリギリ強かった。

 それが、つい数日までの、両者のパワーバランスだったのだが……


「俺の知らん間に、山にこもって修行でもしたのか?」


「あはは、そんな奇妙なことしないよぉ」


 ケラケラと笑ってから、


「呪いが解けたことで、ちょっと体が軽くなったんだよねぇ。解けた直後は、慣れなかったけど、数時間も経てば馴染んできたよぉ。あははぁ」


「……」


「今の私の存在値は500前後……残念ながら、ザコーくんでは勝てないねぇ」


「……ふざけた話だ……」


 そう言いながら、

 ザコーはヤマトから距離をとる。


 そして、チラっとロコに視線を向けて、


「……これだけ差があるとなると、『自力』では、お前を連れて帰るのも、ロコを殺すのも難しそうだな……」


「難しいっていうか、無理だねぇ。というわけで、悪いけど、いろいろと諦めてねぇ」


「……それこそ無理だな」


 そうつぶやきながら、

 ザコーは、アイテムボックスに手を伸ばし、


(俺は絶対にお前をあきらめない。俺の『最終目的』を達成するためには、お前という超人が絶対に不可欠)

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