不合格だ、おつかれぇ!

 不合格だ、おつかれぇ!



「お前は不合格だ。全宮学園Sクラスが求めるのは最上位の天才のみ。まれによくみる程度の『秀才』に用はない」



 スッパリとそう言い切ったボーレ。

 あまりにも無慈悲なその言葉を受けて、

 ゲンは、少し焦った感じで、


「ええ、ちょっと待ってくださいよ。俺、まだ戦えますよ」


 そう訴えかけたが、

 ボーレは首を横に振り、


「そんなことは問題じゃない。試験官である俺が、『お前は合格ラインに達していない』と思った。それがすべてだ。他の誰がなんと言おうと、俺が試験官である以上、俺の意見は絶対なのだ」


「……おいおい……」


 脱力するゲンに対し、

 ボーレは、


「さあ、不合格者は、この場で退場だ。さっさと帰りなさい」


 シッシッと手を振ってみせる。

 徹底して見下した態度。


 そんなボーレに、ゲンはムっとした顔で、


「こっちは人生がかかっているんだ。こんなワケのわからない終わり方なんか納得できるか」


「人生がかかっていない受験生の方が珍しい。みんな、人生を変えるために、ここにくるんだ。あと『納得のできる終わり方』を享受できる者なんてそうそういない。贅沢言うな」


 そこそこ『もっともなこと』を口にするボーレに、

 ゲンは『ま、そりゃそうだが』と心の中でおもいつつ、

 ぼりぼりと頭をかきながら、


「……せめて、どういう風に採点したか教えてくれよ。このまま帰るのは流石に無理だ」


 そう食い下がると、

 ボーレは、やれやれという顔をして、


「まず、美少女を二人連れているという点が気に入らない。『両手に華とは何様だコノヤロウ減点』でマイナス80点だ」


「……はぁ?」


「ぶっちゃけ、その時点でアウトだから、それ以降の採点は無意味なのだが……一応言っておくと、目つきが悪いので、マイナス10点。あと、思ったよりも強かったのが癪に障るから、それでマイナス20点。あと、性格が悪そうで、後輩にしたくないから、とどめのマイナス50点。合計で……何点だ? 計算するのが面倒だから省くが、とりあえず、お前は多大なマイナスを積み重ねてしまったので、当然のように不合格だ。おつかれぇ!」


「……」


「なんだ、その目は。文句があるなら、俺を試験官にした全宮ルル様に言え」


 ふんぞりかえってそんなことをいうボーレ。

 呆れてモノも言えなくなっているゲン。

 非常にカオスな空間。


 数秒の沈黙ののちに、

 ゲンは、軽く青い顔で、


「……ぇ、一発ギャグとかじゃなくて、マジで、俺、不合格?」


「当たり前だろうが。むしろ、逆に『不合格にならない』と思っていたことに驚きだよ。ぶっちゃけ『その程度の力しかなくて、よく試験に受けにきたな』と呆れているところだ、このカスが」


「いや、実力が足りていないのは、まあ、もちろん、わかっているんだが、しかし、将来性とか可能性とか、その辺に焦点をあててくれても――」


 なお食い下がるゲンに、


「ああ、ああ、ゴチャゴチャやかましい! しったことか、お前の将来なんか! 俺にとっては『今』が全てなんだよ! 『目先のことしか興味ねぇ』――それをポリシーとして人生やらせてもらってんだよ!」


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