『ゲン』VS『ボーレ』。

 『ゲン』VS『ボーレ』。


「……あの二人はスルーなのに、俺に対しては、その感じか……なに、この差別。ひくわぁ」


「これは差別ではない。ただの格差だ」


「……そうですか」


 ため息をつきつつ、

 ゲンは、


「一応、どういう格差があるか聞いておこうか。ボーレさん、なんで俺はダメなんですか?」


「チビだから。ガキだから。明らかに弱そうだから。ワンパンで殺せそう。あと、顔がムカつく。目が気に入らない。なにがどうとは言えんけど、イラっとくる」


「…………やっぱ、差別じゃねぇか……」


「ここを通りたければ、俺に認められないといけない。栄えある全宮学園Sクラスにふさわしい人材か否か、俺が見極めてやる」


 そう言いながら、ボーレは、魔力とオーラを、軽めに練り上げる。


「さあ、おしゃべりの時間はおわりだ。そろそろかかってこい」


「……では……」


 そうつぶやいてから、

 ゲンは、ボーレに対し、自分の全てを惜しみなく投入する。


 ボーレに対し、ゲンは全てを賭した。

 この五年間で磨いてきた武の全て。

 分身や武装闘気などの魔法を駆使し、

 可能な限り、体術と剣術を調和させる。


 それを受けて、ボーレは、



「……あれ? 思ったよりもやるな……」



 ボソっとそうつぶやく。


 嫌味などではなく、事実として『想定していたよりも強い』と認識した。


「たんなる金魚のフンじゃなかったか……」


 とはいえ、ボーレは、全宮学園Sクラスの三年生。

 さすがに、今のゲンでは、ボーレに勝つことは難しい。


 ボーレは、その体格に似合わない俊敏さで、

 ゲンの攻撃をササっと回避して、

 時折、ちょこちょこと、浅いジャブでカウンターを決めてくる。


 軽く牽制されているだけなので、ゲンにダメージなどはない。

 子供をあしらっている感じ。


「意外と、まともな訓練を受けているようだな。その年でそれだけ動けるなら、大したものだ。『1000人に一人級』の『秀才』ってところかな」


 ボソっとそうつぶやくボーレ。

 ゲンは、そこで、

 ついに切り札である『虹気』を使う。


 すると、ボーレは、目を丸くして、


「おっと……虹気か……めずらしっ……」


 警戒心を少しだけ強めたものの、


「お前の虹気……そこそこのクオリティだが……まあ、さすがに、素の実力差がありすぎるな。ちょっとオーラに調整を加えたくらいじゃ覆せない差……何があろうと、俺がお前に負けることはありえねぇ」


 ボーレはあっさりと、ゲンの全力をいなしていく。


 ビジュアルは不健康で小物っぽいボーレだが、

 彼は、間違いなく全宮学園Sクラスに所属する超人。


 五歳の子供に負けることはありえない。



 ――闘いがはじまってから3分ほど経過したところで、

 ゲンは、


「はぁ……はぁ……」


 息を切らして、


(さ、さすが、全宮学園で3年も武を磨いてきただけのことはある……今の俺よりもかなり強いな……)


 肩を揺らしつつ、心の中でそうつぶやいていると、

 そこで、ボーレが、


「なかなかやるじゃないか、クソガキ。正直、おどろいた」


 武をおさめて、


「しかし、Sクラスに入れるほどではないな。栄えあるSクラスの壁は高い。『1000人に一人級の秀才』程度では足りない。最低でも『10万人に一人級の天才』でないと話にならない」


 そう言ってから、一呼吸を入れて、


「お前は不合格だ。全宮学園Sクラスが求めるのは最上位の天才のみ。まれによくみる程度の『秀才』に用はない」


 スッパリとそう言い切った。

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