全宮学園Sクラス3年生のボーレ。

 全宮学園Sクラス3年生のボーレ。


 5階にたどりついて、少し歩いたところで、扉を見つけたゲンたち。

 警戒しつつ、その扉を開けると、

 そこには、


(……あのデブメガネは……さすがにモンスターじゃないよな……試験官かな……)


 メガネをかけたデブ男が一人で立っていた。

 そのデブは、ロコたちを視認すると、


「こんにちは。私は、全宮学園Sクラス3年生のボーレ。試験官の一人です。よろしくおねがいします」


 礼儀正しくそう言いながら、ナナメ50度くらいのお辞儀をする。


 二秒ほど頭を下げてから、

 スっと顔をあげて、


「この5階層は、これまでの迷路と違い、私のメガネにかなえば、その時点で突破できるという、非常にシンプルなシステムとなっております」


 自分のメガネをクイっとあげつつ、淡々と説明してから、

 メガネごしに、ロコの目をジっと見つめ、


「はい、ロコ様は、もちろん合格です。さあ、お通りください。あちらの扉の向こうに階段がありますので、そこから6階にお進みください」


 合格判定を受けたロコは、


「……ちなみに、合格した理由は?」


 そう言いながら、ボーレの横を通り抜けていく。


 ボーレは、軽く頭をさげながら、


「理由など、言うまでもありますまい。あなた様の高貴さにあてられて、このボーレ、足と心が震えております」


「……あ、そ」


 面倒くさそうにそう言って、

 ロコは、六階へと進む扉の前まで進む。

 そして、扉に背を預け、腕を組み、

 残りの二人の結果を見守る。


 そんなロコの視線を背中に感じながら、

 ボーレは続けて、ヤマトに視線を向けて、


「次に、そちらの胸が豊かな方……あなたもお通りください」


「あれぇ、私もスルーなのぉ?」


 言いながら、ボーレの横を通り抜け、


「ちなみに、理由はぁ?」


「理由など、言うまでもありますまい。あなた様の巨にゅ……美貌にあてられて、このボーレ、魂が震えております」


「だよねぇ」


 にこやかにそう言いながら、ロコの横に並ぶヤマト。


 ちなみに、ボーレは、チョコネコ内でだけ使用可能な『試験官特権魔法』の遠視で、

 受験生たちの行動を確認しており、

 ヤマトが『ハンパない超人である』ということを確認している。

 ※ ちなみに、この魔法は、ボーレの監督範囲である1階から5階までしか覗けない。



『あの巨乳女、やべぇな……戦闘技能もエグいけど、それ以上に、なんで、隠し扉とか、隠しスイッチとか、全部、当たり前みたいに見つけていくんだ? あれは『スキルどうこう』じゃねぇ……ど、どういう運してんだよ……』



 と、遠視しながら、その格の違いに戦々恐々としていた。


 ――ロコとヤマトの視線を背中に受けながら、

 ボーレはゲンに視線を向けて、




「……それでは試験をはじめる。やるまでもなさそうだが、一応、手合わせぐらいはしてやるさ。さあ、どこからでもかかってこい、目つきの悪いクソガキ」




 冷たく言い放ちながら、

 拳を握りしめて、ファイティングポーズをとるボーレ。

 そんなボーレに対し、

 ゲンは渋い顔で、


「……あの二人はスルーなのに、俺に対しては、その感じか……なに、この差別。ひくわぁ」


「これは差別ではない。ただの格差だ」


「……そうですか」


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