これから先は。

 これから先は。


「さっぱり理屈は不明だけれど……オーケー。これから、私は、あなたの目標をサポートするため、ゲン・フォースの人生を楽しくさせてみせるよぉ」


 ニカっと笑ってみせた。


 その笑顔を見たナイアは、


「壊滅的に笑顔が似合わないな……」


「ひどいねぇ。乙女が笑顔を向けたのだから、もっとロマンチックに褒めてもらいたいところなのだけれど」


「乙女ねぇ……まあ、年齢的にはそう言っても問題ないとは思うが。確か、今は13歳だったっけ?」


「まだ12歳だよ。女性の年齢を、低く間違えるならともかく、高く間違えるだなんて、紳士失格だねぇ」


「紳士を気取る気はさらさらないから、別にいい」


 そう言いながら、


「これからのお前の行動について、二つ、指示する」


 指を二本たてて、


「一つ、これからは、ロコの勢力下の一人になれ。二つ、全宮学園に入れ」


「どっちとも、個人的には、結構やっかいな指令だねぇ。もちろん、あなたの頼みを断りはしないけどさぁ」


「その二つを守るのであれば、あとは自由だ。俺の指示をどう解釈するかも含めて、自由にやればいい」


「全宮ロコの勢力下の一人……その立ち位置でありさえすれば、どういう行動をとろうと自由ってことぉ? ふぅん……ずいぶんと緩いねぇ。その立ち位置だと、私は、あくまでも、『全宮ロコに理解を示している』という程度でしかなく『全宮ロコの命令を聞いてやる気はない』ってスタンスをとるコトも出来ると解釈できうるんだけど、それでもオーケー?」


「ああ。むしろ、気に入らない命令は無視していけ。お前はそれでいい。配下や従者といった『枠』に押し込めると、お前の輝きは死んでしまう」


「私のことがよくわかっているねぇ、ふふふぅ」


 心底嬉しそうにそういうヤマトを後目に、

 ナイアは、


「一応言っておくが、ゲン・フォースに『俺』のことは言うな。ゲンは、俺の記憶を持ち合わせていない。ゲンに俺の記憶は必要ない」


「意味は分からないけど、了解。あなたの命令は遵守させてもらうよぉ。なんせ、私は、あなたのパートナーだからねぇ」


「俺にとってのお前は、パートナーではなく、一支援者に過ぎないんだが……まあ、お前がどう名乗るかは自由だから、文句は言わねぇさ」


 そう言い捨てると同時、ナイアは自分の頭に手をあてた。

 すると、その手が、ポォと光る。

 またたくような、とても淡い光。


 光は虹色にまたたき、

 神々しく発光する。


 その直後、ナイアはフっと意識を失って、

 糸の切れた人形みたいにバタリと倒れた。


 ヤマトは、まったく動かなくなったナイア――ゲンに近づいて、

 呼吸等を確認すると、


「気絶しているだけ……かなぁ?」


 そうつぶやきつつ、

 御姫様抱っこのスタイルでゲンを抱きかかえると、


「変わった生き物だねぇ……今のコレからは、まったく力を感じない……」


 つぶやきつつ、

 ヤマトは、ゲンの顔をじっと見つめる。


「力は感じない……なのに、なんとも不思議だねぇ……特に美形でも不細工でもない、ちょっと目つきが悪いだけの凡人顔なのに……なぜか、妙に引き付けられる……」


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