壊して整えたい。

 壊して整えたい。


「あなたとザコーくんでは、方向性が違う気がしますねぇ。別に、あなたたち二人の思想を理解しているわけではないですが……なんとなく、そんな気がしまぁす」


 そこで、ヤマトは天を仰いで、


「……あなたの場合は、おそらくですが、『壊して整えたい』って感じですよね?」


「……っ」


 胸の奥にある感情を言い当てられて、

 ロコは、一瞬だけドキっとした。


 そんなロコの感情にも気づきつつ、

 その辺はスルーで、ヤマトは続けて、


「でも、ザコーくんの場合『どこまで壊せるか実験してみたい』って感じなのですよぉ」


 と、つらつら自分の見解を述べる。


「……ヤマト……あんた、それだけ壊れているのに、人を見る目はあるみたいね……」


 そこで、ロコは、決意したような顔になり、


「あたしも、ザコーとは二度ほど話をしたことがあるけれど、確かに、あの男からは……あんたが感じたのと同じ印象を抱いたわ」


 本音を並べていく。

 貴族的な腹の探りあいはやめて、

 真摯な態度で、

 ロコは、


「相容れないでしょうね……あんたたちと、あたしでは……見ている方向の芯が違いすぎる。もし、ここで、あんたがあたしの提案を受け入れていたとしても、あたしは、その瞬間から、あなたたちの解体方法を模索していたでしょう」


「あ、そうなんですかぁ? 話がまとまった場合は、普通に、武器の一つとして見てもらえると思っていましたよぉ」


「無理ね。あんたたちは気持ち悪いもの」


「おやおやぁ、本音が止まりませんねぇ」


「あんたたちは壊す……シロアリも壊す……ギルティブラッドも、五大家も全部ぶっ壊す……あんたらなんかいらない……あたしの理想を穢すゴミは……全部、死ね」


 そこで、ロコは全身の気血(きけつ)を充実させる。

 集中力を高め、オーラと魔力をふくらまし、活力をみなぎらせる。


「はぁああっっ!!」


 全身全霊、

 全力の全力で、

 ロコは、ヤマトに向かっていく。


 殺気を込めて、

 心の底から殺す気で、

 ヤマトの首を狙った。


 ――けれど、


「おっ……いいですねぇ。まだ一歩分『奥』があったんですねぇ」


 ヤマトは、余裕の態度を崩さない。

 サラっと回避して、


「がはぁ!!」


 ロコにカウンターをいれると、


「覚悟をぶちこんだ一撃。すごくよかったですよぉ」


 パチパチと拍手。

 嫌味ではない。

 本当に素晴らしいと思った。


「非常にキレが良かったですねぇ。『殺してやる』という鋭い気迫が伝わってきましたよぉ。あと5年……いや、3年ほど年月を積み重ねていれば、あるいは、私に致命傷をあたえることもできたやもしれない……そんな一撃でした。非常にすばらしい」


「はぁ……はぁ……」


 息を切らし、痛みに耐えながら、地に伏しているロコに、

 ヤマトは、


「どうですぅ? 『絶死のアリア・ギアス』とか積んで、再挑戦してみませぇん? もしかしたら、かなり接戦になるかもしれませんよぉ」


 その提案を聞いたロコは、

 ハンッと、鼻で笑い、


「死んだら……あんたに勝っても意味がない。あたしが、このクソったれな世界で必死に生きてきた理由・目的は、あんたに勝つことなんかじゃない……」



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