全宮ルルは異常。

 全宮ルルは異常。


「そのルル様とやらは、ロコ様の仲間になってくれるんですか?」


「仲間になどならないわ。あの人は誰の味方もしない。情では絶対に動かない。慈悲などカケラも持ち合わせていない。あの人は、優秀な人材に対して『病的なほど平等』に門戸を開く。その信念にのみ命をかける奇人」


「……よくわからないのですが?」


「ようするに、あたしたちは、これから『全宮学園に入学する』ということよ。学園はあの人の支配領域。お父様ですら、学園に対しては無暗に手を出せない。――まあ、お父様がその気になれば干渉できなくもないけれど、もし実行したら、きわめて面倒な内乱になる。ルル叔母様は、あたしと同じくらいイカれている変種。『全宮ルル』を過剰に怒らせるほどお父様はバカじゃない」


「なんというか……変わったご家族ですなぁ。話を聞く限り、まともな人間が一人もいない」


「そうね。あたしが知る限りでも、まともな人間は一人もいないわ。あたし意外、全員変態よ。あたしだけが普通でまっとうな美少女」


「……」


 渋い顔になるゲン。

 心の中で、いくつも言葉が浮かんだが、すべてソっと飲み込んだ。



「――おっと、ツインサンダーウルフですね。」



 会話を交わしている間も、

 頻繁にモンスターが出現して襲い掛かってきた。


 しかし、


「龍毒ランク15」


 ロコがサラっと魔法を使うと、

 狼が出ようが悪魔が出ようが鬼が出ようが蛇が出ようが、

 どいつもこいつも、一瞬で全身紫色になり、泡を吹いてぶっ倒れ、

 三秒後には溶けてなくなっていく。


「相変わらず、ロコ様の魔法はハンパないですね……それだけの力があっても、さっきのヤマトとかいうヤツには勝てないんですか?」


「あいつは、あたしが二人いても勝てないわ。ゴキのヤマト。あれは、別格。なんせ、クリムゾン・スターズの『シューティング・ナイトスター』とほとんど同じ実力という超人だから」


 『シューティング・ナイトスター』は、クリムゾン・スターズのリーダー。

 世界最強部隊の最強戦士。


 ちなみに、ヤマトの存在値は400前後。

 たいして、ロコの存在値は200前後。

 ほぼダブルスコア。


 全宮の血族とはいえ、まだまだ幼いロコの存在値は、

 『ソウルさんより多少強い』という程度でしかない。


「あと十年ほど成長して、あたしの存在値が『完成』すれば、どうにかヤマトとも対等以上に戦えるようになると思うけれど、今の不完全な存在値では相手にならない」


「……なんで、それほどの強者が、反社組織の構成員なんかやっているんですか?」


「人格がイカれているから。それ以外の理由はない」


「……」


「人間っておかしなものよね。壊れて生まれてきた人間は、絶対にまともにはなれない。普通の幸せってものを感じることができない。だから、どうしても普通には生きられない。そういう連中の受け皿がゴキとかシロアリ。その受け皿からもこぼれたのがギルティブラッド。壊れた連中の掃きだめ。ヤマトは、受け皿からこぼれきってはいないだけ、まだマシな方なのかな」

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