鬼組局長。

 鬼組局長。



 毒組局長のソウル・フォースと、

 鬼組局長のドウレン・マクナ。


 ドウレンは、

 ソウルさんとの2~3分前後の談笑のあとで、


「ところで、そのガキはなんだ?」


 チラとゲンに視線を向けて、そう言った。


「私の息子だ。今は、毒組でバイトとして働かせている」


「……友人に対してこんなことは言いたくないが……バカか、お前。こんな大事な場にガキをつれてきてどうする」


「ま、そういわれる覚悟はしているよ」


 そう前を置いてから、

 視線の強度を強めて、


「この子は天才だ。いずれ、毒組のトップにつく。よって、はやいうちから、こういう場になれさせておくべきだと思ってな」


「かわいい親バカ……で許される世界じゃないぞ。周りの目を見てみろ」


 いちいち確認しなくともわかる。

 車から降りた瞬間から、ずっと、白い目でみられているのはわかっている。


「……『覚悟はしている』と言っただろう。何度も言わせるなよ」


 そこで、ソウルさんは、さらに目力を強めた。

 その眼力を受けて、

 鬼組のリーダー『ドウレン』は、


「昔から、イカれたヤツだとは思っていたが……ここまでとは思っていなかったな。いっておくが、『上』から何か言われたとしても、私は助けないぞ」


「お前の助けなど必要としていない」


「そうかい……まあ、好きにしな」


 そう言って、ドウレンは、ソウルさんに背を向けて、元の集団の中へと戻っていった。


 その背中を見送りつつ、

 ゲンが、


「あのドウレンという人は……悪い人ではなさそうですね」


 そう言うと、

 ソウルさんは微笑んで、


「自分の地位を脅かそうとするものに対しては狡猾で苛烈な男なんだがな……すでに出世レースからこぼれ落ちた相手に対しては寛容という……まあ、わかりやすい男だな」


「ソウルさんは出世レースから落ちているのですか?」


「昔に比べたらな。全宮学園で机を並べていた時は、私の方が成績的に上の時もあって……その時は、強い嫉妬心をぶつけられたりもした。殺し合いをしたこともある。お互い、若かった。もう20年以上前の話だ」


 全宮学園Sクラス。

 エリアBの最高学府。

 そのトップを争っていた二人。

 ※ 実際には、もう一人、トップを争っていた者がいた。

   そのもう一人は、現在、

   ロコの兄である全宮アギトの特殊部隊『黒組』の隊長となっている。


「私は辺境で警察になることを望んだが……あいつは、一心不乱に中央で『上』を目指した。お前と同じく、五大家に近づく道を目指したんだ」


 毒組も鬼組も、全宮家直属の特殊部隊というポジションで、

 対外的な階級差のようなものはないという事になっているが

 しかし、実際には、はっきりとした序列というものがある。


 エリアBの統括であり全宮家当主である全宮リライト直属の部隊と、

 辺境の一部を与えられているだけの幼女でしかない全宮ロコ直属の部隊。


 その差は明確。

 仕事内容もまったく異なる。


 毒組は、何組かいる『対テロ屋』の一つに過ぎないが、

 鬼組は、唯一無二の『王の剣』という立ち位置。


「あの地位につくまでイバラの道だったはず。ドウレンは、きっと、頑張ったんだろう……私の想像も及ばないくらい、頑張って、頑張って、頑張ったんだろう……同窓として、私はあいつを誇りに思う」



 父の話を聞きながら、ゲンは、ドウレンの背中を目で追いつつ、心の中で、


(全宮テラ直属の特殊部隊『鬼組』……完全院リライト直属のクリムゾン・スターズとくらべられることもある超精鋭部隊……)


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