全宮ロコ。

全宮ロコ。


(俺が得た情報が全て本当なら……五大家はやべぇ……今のままでは、永遠に届く気がしない――そういう『果て』にあるような気がしてならない……今のままやっていたら、この人たちに勝つことすら不可能……)


 そこで、ゲンは、

 ふと、ルスが言っていた言葉を思い出す。


『もし君が30歳だったら、今の一発で、殺されていたと思うね!』


(30歳の俺は……はたして、あの変態を倒せるだろうか……)


 想像してみた。

 ソウルさんに倒されはしたが、

 しかし、ルスは、おそろしく強かった。

 全力で殴ってもビクともしなかった強者。


(かつて『罪帝の特殊部隊で隊長をしていた』という話はおそらく嘘じゃない……というか、嘘だったら困る。あれほどの強者なのだから、せめて、そのぐらいの地位にあってくれないと) 


 あんなのが、そこら中を歩いている景色を想像し、

 『そんなものがあってたまるか』とため息をつく。


(あのランクの『バケモノ』を、倒せる日が来るのだろうか……俺みたいな、ちょっと裏技がつかえるだけの無能に……)


 と真剣に不安に思うゲン。


(世界は広い……強者は遠い……俺は、まだまだ弱い……弱すぎる……)


 ギリっと奥歯をかみしめる。


 ゲンが、自分の未来に不安を感じている横で、

 ソウルさんが、ルスに切られた自分の腕を見つめながら、


「いかんな。損傷が激しい……腐敗属性の毒だったか……まいったな……」


「もっと焦れよ、局長。これ、マジでヤバいやつだぞ」


「そうですね。急いで戻らないと、本当に再生できなくなります」


「まあ、そうなったら、片腕の剣士としてやっていくさ。私の実力なら、腕の一本や二本なくとも、一流の戦士として戦える」


「いや、二本なくしたらさすがにきついと思うが」


 と、ヒジカが、呆れていると、

 そこで、




「――キズモノの配下なんて必要ないわね」




 背後から声が響いた。

 高貴さを感じさせる少女の声。


 反射的に、全員の視線が、声の方に向いた。


 そこにいたのは、一人の美少女。

 歳は、ゲンと同じか、少し上といったところ。

 金髪のツインテールで、大きな猫目。

 一目で金持ちだと分かる富裕層オーラをまとっている。


 彼女の姿を目の当たりにした瞬間、



「「「ロコ様?!」」」



 ソウルさんとオキとヒジカは、

 即座に片膝をついて、平伏の姿勢をとった。


 ソウルさんは、

 額に汗を浮かばせつつ、


「あの程度の輩に不覚をとってしまったこと、心から謝罪申し上げます。今後、このようなミスは二度と犯さないと誓います」


「聞こえなかった? キズモノの配下など必要ないと言ったのだけれど?」


「片腕であっても闘えます! まだまだ、あなた様に尽くせます!」


「尽くすだけなら、誰だって出来る。そこらの無能でも、這いつくばって足をなめるくらいはできるでしょうよ。けれど、あたしは、足をなめることしかできないゴミに興味はない。あたしが欲しいのは、使えるコマだけ」


「もちろん、理解しております! 心からの忠誠を誓うのはもちろんのこと、必ず、お役にたってみせます。ですので、どうか!」

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