お前のような、ただのカスが、絶死を使うなよ……絶死が穢れる。

お前のような、ただのカスが、絶死を使うなよ……絶死が穢れる。



 ヒジカ&オキが闘っていた男は、

 途中で、ソウルさんとゲンの視線に気づいたようで、


「おっとぉ! 新しいお客さんだぁ! 嬉しいねぇ! 俺はギルティブラッドのルス! 今日で終わる男だ! さあ、あんたらも一緒に踊ろう! 俺の最後を! 派手に飾ってくれぇえええ!」


 その男は、ヒジカ&オキに、いくら切られようと、

 『痛みなんざ知ったこっちゃねぇ』とばかりに暴れまわっている。


 もはや『闘い』というより『暴動の鎮圧』だった。


「……絶死を積んでいるのか……面倒だな」


 ソウルさんが、ボソっとそうつぶやいて、


「というか……お前のような、ただのカスが、絶死を使うなよ……絶死が穢れる」


 心底イラっとしたような顔で、そう言った。

 ソウルさんのつぶやきを背後で聞いていたゲンは、


(絶死が穢れる? 妙な思想を持っている人だな)


 心の中でそうつぶやく。


(絶死のアリア・ギアス……ようするに、全生命力を暴走させる最終奥義。文字通り命がけの超覚醒技、極限に至った覚悟の最果て……それを尊(たっと)んで神聖視したくなる気持ちも、まあ、分からないってワケじゃないけど……しょせんは、絶死も、アリア・ギアスの一種でしかない)


 『自分の嫁さんの名前がついているシステム』を『変態が使用している』という事に対する忌避感もあるのかもしれない――などと考えつつ、

 ゲンは、自身のオーラと魔力を高めていく。


(絶死がどれだけエグいかは、本で読んだことがある……リミットが外れる覚醒。当然、繊細な制御なんかできるわけがない。……今の俺のHPだと、攻撃がカスっただけでも死ぬ可能性がある……)


 まだ五歳ゆえ、ゲンの実戦的経験値は皆無に等しいが、

 その経験値不足を補おうと、家の棚に並んでいる『戦闘関連の本』は山ほど読んだ。

 最低限以上のレベルで、武に関する知識は有している。


(貴重な経験だ……血と、肉と、死……ここから先、『強さ』を求めていくなら、避けては通れない道……)


 ヒリヒリした緊張感。

 『狂った悪意』の中で学んだ本物の経験は、ゲンの血肉となる。


(本を読んだり、無抵抗のスライムを殴り続けたりするだけでは、永遠に得られない経験……本当に、ありがたい……)


 ゲンは、自分の運命に感謝してから、


「――虹気――」


 全身に力を込めて、

 現時点における最強の覚醒技を使用する。


 全身が虹色のオーラに包まれる。

 その様子を横目に、

 ヒジカが、


(ほう……あのガキ、虹気がつかえるのか。珍しいな)


 素直に感嘆した。

 虹気がつかえる者の割合は、10万人に一人程度と、かなりのレア。


 ちなみに、虹気を持っている者は『人間性に難があることが多い』と認識されており、

 どこか『第一アルファにおけるサヴァン症候群的な認識』を受けている。


 また、虹気に『クオリティ差』があることは広く知られており、

 クオリティが低い場合、大した恩恵は得られないため、

 『低クオリティの虹気しか使えず、基本スペックも低い者』の場合、

 『ただ珍しいだけの雑魚』として扱われる。


(ガキ……お前は、どっちかな……使えるレアか、使えないレアか……)


 少し興味が出てきたのか、

 ヒジカは、前線から少し下がる。

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