はじめまして、ごきげんよう。

はじめまして、ごきげんよう。


(もし、仮に、万が一、『どっかのチンピラが上等こいただけ』……という非常に楽な線だったとしたら、そのカスには、俺のストレスのすべてをぶつけさせてもらう。二度と、ナメた者が現れないよう、徹底的にやる。……できれば、楽な線であってほしいが、人生ってのは、なかなか、思った通りにはいかねぇからなぁ……まったく、本当に、生きるってのは面倒くさい)


 そう結論づけたところで、

 ゴミスは、とあるホテルの前についた。


 『最も栄えているエリアA』でもトップ10に入る最高クラスのホテル。

 高さ50階相当で、見栄えのいいメトロポリタン・ホテル。


(最上階……か)


 上をにらみつけながら、

 ゴミスは自分に気合を入れる。


(さぁて……どのパターンかな……)


 心の中でつぶやきながら、

 ゴミスはエレベーターに乗り込んだ。


 数秒の浮遊感のあと、

 チーンと音が鳴って、

 目的の階層にたどり着いたゴミスは、

 最終目的地である扉の前に立ち、


(ゴキではありませんように、ゴキではありませんように……全宮が絡んでいる線でもありませんように……完全院が出てくるのもイヤだなぁ……あぁ……もう、だるぅ……)


 と、心の中でつぶやきながら、

 ゆっくりとドアをノックする。

 丁寧な配慮が見られるコンコン。


 乾いた音の二秒後、




「――開いている」




 という声が聞こえた。

 よく通る女の声。

 ジワっと脳に響く、妖艶な声。



(……なじみのない声……ゴキのメンバーではない……新入りって線もありえるが……とりあえず、『完全院の上位』じゃないことは確定。こんな声の女はいない……いないよな……うん……多分。……全宮はわからんなぁ……あっちの連中とは、ほとんど会ったことねぇし)



 ゴミスは、頭の中で、声の主(ぬし)を思い出そうとしてみて、


(思い出せない。たぶん知らんヤツ。……となると、全宮の線が濃くなってくる。やだなぁ……まさか、最近、噂になっている『全宮ロコ』の派閥か……五大家の在り方そのものに対して反発しているって噂のイカれたじゃじゃ馬……とんでもないバカの暴走……だとしたら……関わりたくねぇえ……)


 と認識すると、

 『すぅ、はぁ』と軽く深呼吸をして、

 ガチャっとドアを開けた。


 中に入ると、

 そこには、




「はじめまして。ごきげんよう」




 キセルを吹かせている妖艶な美女と、

 その護衛と思しき猿顔の男がいた。


 美女の方は、高そうなイスに腰かけていて、

 男の方は、そのナナメ後ろに立ち、ゴミスに平坦な視線を向けている。


 ゴミスは、その二人に対する『練度の高い警戒』と同時に、

 この部屋の中にワナ等がないか丁寧かつ高速で観察しつつ、


「丁寧なあいさつ、痛み入る」


 などと言いつつ、

 許しを請うこともなく、

 勝手に、近くのイスに腰かけて、


「とりあえず、まずは、自己紹介からはじめようか。――俺はゴミス。シロアリの代表をやっている者だ」


「知っている」


「……だろうな。で、そっちは?」


「栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席・序列三位。エキドナール・ドナ」

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