血濡れの未来予想図。

血濡れの未来予想図。


(今回の件……『誰』が実行犯かで対応が大きく変わる……完全院の関係者が実行犯なら、どんな理由であれ、和解するしかない……屈辱的な話ではあるが、しかし、それ以外の道はなく、それに、正直、そっちの方が楽な結末といえる……『どっちに転ぶかわからない抗争』などやりたくない)


 『ガタラ(幹部)』の視点では『どうするべきか』と悩む場面でも、

 『ゴミス(リーダー)』の視点だと『答え』は決まっている。


(もし、全宮が動いていた場合……厄介な取引になるだろうな……非常に鬱陶しい)


 全宮が首謀の場合、『何を求められるのか』と考えながら、

 続けて、


(ほかの反社連中の暴走だった場合は……もちろん、問答無用で殲滅(せんめつ)しなければいけない。手段は問わず、徹底的に。……シロアリにケンカを売ることの意味を、魂魄にたたき込まなければ、ルールに反する)


 ため息がもれた。

 『面倒極まりない!』と脳が悲鳴をあげている。


(メンツというゴミを抱えて生きなければならないというのが俺の枷……しょせんは、俺も歯車の一つ。……きわめて面倒で、とにかく厄介。今すぐ投げ出したくて仕方がないが……やるしかない。それが俺の存在意義……)


 『上』に対しては、どんな事情があれ配慮しなければいけない。

 五大家以外が相手なら、誰であろうと容赦せずに殲滅しなければいけない。


 上に対しては『良質な道具』としてシッポを振り、

 周囲に対しては『ヤクザ』として睨みをきかせる。


 本来ならば、そんな面倒くさい生き方などしたくない。

 重たい荷物ばかりを背負った非効率的で面倒な生き様。


 だが、ゴミスは、そういう世界にいる。

 ゆえにその宿命から逃げられない。


(……『ザコー(ゴキのリーダー)』がウチにケンカを売るとは考え辛いが、もし、これがゴキの仕事なら……大きな戦争になるな……ザコーは、ちょっと頭がおかしいから、ウチに上等をかましてくる可能性もゼロじゃないんだよなぁ……もし、本当に、ゴキの仕事だったら……まあ、軽くドンパチしたあとで、完全院と全宮に調停を頼むはめになるだろうな……鬱陶しい……頼むから、その線だけは勘弁してくれ……)


 本当は、血で血を洗う抗争など勘弁なのだが、

 最低限のメンツを守るためには絶対に回避できないルート。


 本心で言えば、ビジネス的・数学的に片をつけたいと思っている。

 だが、ゆるされない。

 ゴミスが生きているのは、そういう世界ではない。


(……『ゴキ』も『お上(かみ)』も関係ないってことはないだろう。確実にどちらかとは話をつけることになる……それはわかっている。……が……もし、仮に、万が一、『どっかのチンピラが上等こいただけ』……という非常に楽な線だったとしたら、そのカスには、俺のストレスのすべてをぶつけさせてもらう。二度と、ナメた者が現れないよう、徹底的にやる)


 多角的にモノを考えて、

 ある程度、今後の展開に対する目途がつくと、


(……楽な線であってほしいが、人生ってのは、なかなか、思った通りにはいかねぇからなぁ……まったく、本当に、生きるってのは面倒くさい)




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