最強の超人。

最強の超人。


「少し、質問の趣旨をかえようか。俺の中では、実のところ『先ほどの質問と、系統的には同列』なんだが……まあ、そんなことはどうでもいい」


 迂遠な前を置いてから、センは問う。


「――お前が知っている『最強』は誰だ?」


 非常に丁寧な、その質問に対し、

 シアエガは、


「あなた様でございます」


 迷いなく、

 まっすぐに、

 そう答えた。


「……ふむ。では『俺』をのぞけば?」


「完全院リライトが、私の知る限り、最強の超人でございます。かの者は、最高峰の資質をもって生まれ、だからこそ、当然のように、最強のコスモゾーン・レリック『クツグア』と契約した者。この世界を統べる頂点」


(クツグアねぇ……確か、それって、クトゥルフ系統の名前だよなぁ……俺、その辺は、あんまり詳しくねぇんだよなぁ……)


 異世界モノの小説でも、ちょいちょい名前が出てくるクトゥルフ系統の神話生物。

 異世界モノを読み込んでいるセンは、だから、その手の名前に対して、多少の憶えがある――ものの、しかし、深い知識などは持ち合わせていない。


 センの、『神話』や『超獣』に対する知識は、

 そこそこ広いが、実のところは極めて浅く、

 バハムートと聞いたら、まっさきに龍の姿を思い出す程度の器でしかない。


(なんつぅか、俺の中にある知識って『表面をさらっただけの薄い情報』か、もしくは『受験特化の偏向暗記知識』だから、処理速度はそこそこでも、臨機応変に使える血肉化されたブラックボックス力は微妙なんだよなぁ)


 ここまで、ありとあらゆる困難を、

 努力と根性オンリーで切り抜けてきた脳筋――それがセンエース。


 決しておバカさんではないが、

 決して聡明な知恵者でもない。


 ゆえに、いつだって『完全なる正解』を導き出すことは叶わない。

 いつだって五里霧中、いつだって暗雲低迷。


 ――が、別にかまわない。

 もちろん、完全なる正解に届ければ、それが問答無用でベストなのだが、

 それが『不可能だ』と『理解できている』のなら、

 『それ相応の闘い方』というストレートで勝負ができる。


 センは決して賢くないが、

 しかし、ただの『阿呆』ではない。



「――仮に『お前を装備したバロール』の強さを『100』とした場合、完全院リライトはどのぐらいだ?」



「申し訳ございません。私の中には『情報』があるだけで、具体的な詳細はわかりません。クツグアが私よりも上位の存在であることは『情報として知っている』のですが、しかし、どの程度、私よりも上位に在るのか、その『程度』等は不明でございます」


「情報として知っている……それは、つまり、どっちが強いか、戦って測ったことはないってことか? あくまでも、『クツグアはシアエガより上位』という教科書的な情報をもっているだけ?」


「はい」


「では、なぜ、俺が最強だと答えた? クツグアや完全院リライトと戦ったことがないなら、どっちが強いかなんて、わからないだろ」


「あなた様の方が強くて当然……と、私の心が強く感じたからでございます」


「……心ねぇ……しゃれた言葉を使うじゃねぇか」

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