永遠を積んでも届かない場所。

永遠を積んでも届かない場所。


 究極超神センエースの、あまりにも深い覇者のオーラに触れたことで、

 シアエガは、


(……畏れを超えた情動が、理解を……飲み込んでいく……)


 強大な畏怖以上の敬意に突き動かされ、


「あなた様は、私が『永遠』を積んでも届かない場所におられる」


 心に浮かんだ言葉を口にする。

 想いの吐露。

 感情が、自分という器からこぼれてあふれた。


 それだけの言葉。


 そんなシアエガの言葉を受けて、

 センは、少しだけ遠くを見つめ、


「どうかな。俺も、お前も、まだ『永遠』を積んではいない。だから『その結論』に至るのは早計……なんだが、まあ、別にいいさ。お前が『自分という個に対してどんなケリをつけるか』に興味はない。それよりも……」


 そう前を置いてから、

 センは、輝くオーラの質をさらに高めて、


「お前に一つ聞きたい」


 遥かなる高みから声をかける。

 シアエガの魂が、ビクンと震えた。

 襟(えり)を正し、全力で言葉を選び、



「なんなりと、尊き御方」



 どこまでもうやうやしく、そう返事をした。


 それは、まさしく、王に対する態度。

 配下の心得。

 絶対のマナー。


 もはや、逆らう気力など、わずかも残っていない。

 そんなものは完全に霧散して、

 今は、なにか別の……『とても暖かい感情』に包まれている。


(私は、今……深い幸福を感じている。とても、とても高次の至福……理解が追い付かない暖かさが……私の全てを包み込んでいる……)


 『シアエガの中にある概念』だけで『その感情』を丁寧な言葉にすることはできなかった。

 シアエガは、決して無知ではない。

 語彙力が死んでいるわけではない。

 しかし、言葉に出来なかった。


(あたたかい……包まれている……私は……)


 理解できない『その感情』は、

 シアエガの中で、どんどんと膨らんでいく。


 単純な話だった。

 シアエガは神を知った。

 そして、だから、当然のように、

 ――シアエガの心には、神が宿った。


 そんなシアエガに、

 センは問う。


「ウムル=ラトについて、知っていることを全て教えてくれ」


 その質問に対し、

 シアエガは、頭を悩ませた。

 必死になって頭を回転させるが、

 シアエガの『中』に、答えはなかった。


「……申し訳ございません、尊き御方」


 苦々しい顔で、

 心からの謝辞を述べてから、


「ウムル=ラトという言葉に……聞き覚えはございません。もうしわけございません」


「……ほう」


 頷きながら、

 センは頭の中でいろいろと多方面に思考を飛ばしながら、


「まったくか?」


 再度、そう尋ねる。


「まったくでございます。もうしわけございません」


「ふぅん……」


 センは、顎に手をあてて、虚空を見つめながら、


「少し、質問の趣旨をかえようか。俺の中では、実のところ『先ほどの質問と、系統的には同列』なんだが……まあ、そんなことはどうでもいい」


 思考をまとめつつの、

 迂遠な前を置いてから、


「お前が知っている『最強』は誰だ?」


 丁寧に、ゆっくりとした質問。

 探るように、

 うかがうように、


 ――そんなセンの問いに対し、

 シアエガは、うやうやしく、


「あなた様でございます」

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