第二フェーズ。

第二フェーズ。


「今回のミッションで、ずいぶんと情報が集まったわ。『この世界の中層以下は、そこまで脅威ではない』ということ。『深部の情報は、もっと踏み込まなければ入手できない』ということ」


 状況を整理してから、

 ミシャは、



「……あらかた『欲しかった情報』は集まった。さすがに、そろそろ次の段階に移行するタイミング……なんだけど……」



 次の段階。

 それは、

 ――『天下』を使った人海戦術。


「問題は師を説得できるかどうかなのよね……」


 ミシャは、やれやれ顔でタメ息をつき、


「師は我々を想いすぎている。もちろん、うれしいけれど、しかし、ご自身の身を最優先で案じていただかなければ――」


 と、そうつぶやいた時、

 ミシャの脳内に、




『――ミシャ。返事をしろ、私だ』




 アダムの言葉が響いた。

 ミシャは、ンンッとノドの調子を整えてから、


「聞こえているわ。なに?」


『Cレリックはどうだった?』


「やはり、大したコトはなかったわ。なんも問題もなく、当初の予定通り、バロールに回収させることができた。コスモゾーン・レリックという大層な名前だけあって、そこそこマシなアイテムだから、装備者となったバロールはだいぶ強化されたけど、面白い情報はもっていなかったから……収穫量としては可もなく不可もなく、と言わざるを得ないわね」


『了解した。それでは、主上様の命令を伝える。これまでに奪取した情報の整理と共有が終了したら、即時、全員で【こちら】に戻ってくるように』


「了解」


『あと【第二フェーズ】に移行するから、情報共有のさいに、そのムネを下に伝えておけとのお達しだ』


「あら……師は『天下』を使うことを了承なさったの?」


『私とシューリで根気よく説得した』


「……ご苦労様」


 師の頑固さを知っているミシャは、

 二人の苦労がリアルに想像できたため、

 心からのねぎらいの言葉を述べた。


 通信終了後、

 ミシャは、テキパキと指示を出し、

 五分とかからず、情報共有を終わらせ、

 『第二フェーズ始動』の指令を出すと、

 そこで、ドナに視線を送る。


 無言の命令を受けとめると、ドナは、

 自身の右耳につけているピアスを右手でつまみ、


「――ドナドナ――」


 呪文を唱えると、

 ドナを含めた『その場にいる全員』が、

 ドナのピアスの中へと引き込まれていった。


 空間干渉に対する障壁を張りながら、

 亜空間から亜空間への次元跳躍。



 ――『ドナのピアスの中』は、

 無限を思わせるほどに広くて白い空間だった。


 その空間の中央で、

 『この上なく尊き神』とその従者たちが、華麗に舞っていた。


 狂気のダンス。

 鋭敏なステップ。


 歯をむき出しにしているアダム、シューリ、平熱マンの三人を相手に、

 汗一つかくことなく、優雅に、華麗に、

 ――究極超神センエースは、空間の全方位に残影を刻んでいた。


 その光景を見たカティは、

 思わず、


「……美しい……」


 と、心からの感嘆をこぼす。


 アダムもシューリも平熱マンも、

 今のカティでは想像すら出来ないほどの『高み』にある。

 しかし、

 この上なく尊き神は、

 そんな三人の超越者を相手に、

 わずかも怯むことなく、

 ただただ美しさを魅せつけているばかり。

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