穏やかなミーティング。

穏やかなミーティング。


「やかましい。ミーティングの邪魔をするな、三下」

「うぎへぺっ!」


 一瞬であっさりと動きを封じられるシアエガ。


 ミシャは麻痺っているシアエガに対し、

 特に強い意識を向けることなく、


「次」


 サラっと、報告会の続きを促す。

 命令を受けて、サトロワスが、平伏の姿勢のまま、


「あのシアエガというガラクタが『際立って劣っている最低最弱のCレリック』である可能性は否めません。よって『我々だけでも完全制圧が可能である』とは言い切れません。まだまだ情報が足りないかと存じます」


 常に全体を俯瞰し、

 バランサーの役割を成そうとするサトロワス。


 サトロワスの視点だと、カティは楽観的過ぎる。

 カティの視点だと、サトロワスは慎重すぎる。


 互いに正反対な思考形態と意識ベクトル。


 しかし『それでいい』と互いに思っている。

 それぞれの思想があって、それぞれの役割がある。

 『最終的なゴール』が同じなら、ルートは別々でも構わない。

 それだけの話。


「ドナは?」


「尊き主を害する可能性はゼロではない……しかし、主を害する『可能性』は、どうやら、そう多くもなさそうである……それが私の所見でございます」



「同意見よ。おそらく、この世界は、想像していたほどの地獄ではない。しかし、この世界が不気味であることに変わりはない。この世界の深部には、おそらく『厄介な難敵』が存在する。我々の役目は、その脅威をあぶりだすこと」



 そう言ってから、

 ミシャは、シアエガ(バロール)に視線を向けて、


「最後に、バロール。あなたの所見を述べなさい」


 そう命じると、

 それまではシアエガに抑え込まれていた『バロールの意識』が、

 シアエガの支配を押しのけるように、グググっと前に出てきて、


「少々やっかいな精神支配力ですが……抗え切れないレベルではないと判明しました。サトロワスが言うように、シアエガが『際立って低品質な最低最弱のガラクタ』である可能性もありますので、楽観視はできませんが、しかし、一つの体験的事実・実験的事例としてご報告させていただきますと……この程度ならば、栄えあるゼノリカの天上に属する者で支配される者はいないと断言できます」


 つらつらと、

 自分の意見を述べるバロールに対し、

 『バロールの手に握られた禍々しい斧』に意識を押し返されたシアエガが、


「な、なぜだ、なぜ私の支配から抜け出せる! いったい、なにをした!」


 わめいているシアエガに、

 ミシャが、穏やかな口調で、


「疑問を抱く箇所などどこにもない。私の家族が、貴様ごときに本気で支配されるわけがない。それだけの話」


 バッサリとそう切り捨てた。

 その発言に対し、バロールが、うやうやしい態度で、


「ミシャンド/ラ様……このバロールを高く買っていただけたこと、まことに恐縮で恐悦至極ではございますが、しかし、正直に申し上げますと……ギリギリでした。どのような状況であれ、私がシアエガに支配されることはないでしょうが……しかし、シアエガよりも高位のコスモゾーン・レリックから精神支配を受けた際、耐えられるかどうかは懐疑的でございます」

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