ゼノリカにとっての利。

ゼノリカにとっての利。


(いまだ、戦闘力はたいしたことないけど、アイテムとしての性能は破格と言っていい……何よりのポイントは、あの、オーラを増幅させていると思しき『虹色のオーラ』……すごく異質……ただ増幅させているだけって感じじゃない……グっと深くなっている……キレがよくなっているっていうか、コクが増しているというか……)


 サトロワスも、


(深みと厚みがある。純粋な結晶。その美しさは非常に魅力的。……素晴らしいと感嘆できるほど)


 と、シアエガの強さを認め、


 ――しかし、


(けれど、『想像』していた以上に大きいってワケではないねぇ。ま、そこに関しては、こちらが事前に『あまりにも大きな想定をしすぎていただけ』とも言えるけどねぇ)


 まったく焦った様子はなく、

 至極冷静に、そう評価を下した。


 この世界の攻略を開始してからというもの、

 九華の面々は、常に『最悪のナナメ上』を想定して動いてきた。


 ゆえに思ってしまう。

 この程度ならば想定の範囲内に収まる――と。


 『虹シアエガ』との闘いが始まってから、ちょうど5分が経過したところで、

 ――ドナが、


(ほしかった情報は、ある程度あつまった……)


 心の中でそうつぶやいてから、


(そして、これ以上はただの消耗戦になる……ここまでくれば、あとは『上』に任せた方が合理的……『自分たちだけでは処理できない』という事実に対して『ふがいない』という気持ちもなくもないが……私の感情などどうでもいい。重要なのは、どの選択が、ゼノリカにとって、より大きな『利』となるか否か。それだけ)


 そう決断すると、

 迷いなく、自身の右耳に装着している『ヒスイのピアス』を、人差し指でトンッと軽くはじいた。



 すると、

 ピアスがカっと光った。

 直後、小さな光の塊が、ピアスの中から飛び出してきた。

 その光の塊は、コンマ数秒で小柄な人の形となり、






「――ロケハン、ご苦労。一人、一言ずつ、Cレリックに対する所見を述べよ。まずはジャミから」






 優雅なミシャンド/ラの言葉。

 荘厳な態度。

 超越者のオーラ。


 そのオーラを受けて、その場にいる九華は、

 ゴリゴリの戦闘中だというのに、

 全員が全員、当然のように、

 シアエガに背中を向けて、片膝をつき、頭を下げた。


 ジャミは、うやうやしい態度で、


「きわめて大きな脅威ではあることに間違いはありませんが、ゼノリカならば対処可能な範囲内かと」


 続けてカティが、


「ある程度の消耗を覚悟で、丁寧かつ慎重にコトを運べば、我々九華だけでも、世界攻略は可能かと存じます」


 と、そこで、

 シアエガが、

 ブチ切れ顔で、





「――この私という偉大な神格を前にして、無防備な背中を晒すとは、いい度胸だ! 頭が悪いとも言えるがなぁ!」





 ――さすがに『ここまでナメた態度をとられて黙ってはいられない』とばかりに、

 無防備なジャミの背中を切りつけようとしたシアエガ。


 しかし、


「やかましい。ミーティングの邪魔をするな、三下」

「うぎへぺっ!」


 ミシャが軽く指を振っただけで、

 シアエガは脳からつま先まで貫通する強い『痺れ』に襲われて、

 指一本、動かすことが出来なくなってしまった。


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