バロール×シアエガ。

バロール×シアエガ。


「貴様の、その膨大な力を称え、私の使用許可を与える。どうだ、誇らしかろう」


「……使用許可? 意味がわからないので、誇りようがありませんな……申し訳ありませんが、少しご教授願えませんか?」


「知る必要などない。貴様はただ、私の器となればいい」


(……『何も教える気はない』……ってことなら、このカスに価値はねぇ。さっさと鹵獲(ろかく)して、徹底的に痛めつけて情報を根こそぎ吐かせる。もし、反抗心をあらわに沈黙を貴(たっと)ぶようなら、危険物として適切に処理する。それだけの話)


 勝手にしゃべってくれるのなら楽だ――と、ここまでは『好き勝手なおしゃべり』を許していたが、しかし、下手に情報を出し惜しみするようなら、もう容赦はしない。


 ぶっちゃけ、バロールも、だいぶイライラしてきている。

 そろそろ我慢の限界。


 というわけで、バロールが『ゼノリカの執行』を決意した――

 それと同じタイミングで、




「さあ、私を使え、ブナッティ・バロール」




 シアエガがそう言うと、

 バロールの心臓がドクンと鳴った。



(……なんだ? 今の衝動……)


「貴様は条件を満たした。この私に、その才を認めさせた。これより、貴様と私は一つの神。貴様は私の中に在り、私もまた、貴様の中に在る」


 そう宣言した直後、

 シアエガは、

 現時点の器であるガタラを飲み込んでいく。


 自分が飲まれているコトに気づいたガタラは、当然、


『――ちょっ、待ってください、シアエガ様、何を――』


 反抗しようとするが、


「ガタラ。貴様はもう必要ない。これまでご苦労だった。礼を言う」


 シアエガは、


『ふざけっ――放せ――ヤメ――』


 ガタラの抵抗を、あっさりと、完璧にはねのけ、



『いやだ! やめ! ァあああああー―』



 無慈悲に飲み込んでしまうと、

 シアエガは、その流れのまま、

 グニュグニュと全身を変形させて、

 ――ついには、『まがまがしい斧』となった。


 その『斧』を見た瞬間、

 バロールの脳が、先ほどの衝動よりも強く、熱くしびれた。


「?! また、この感覚……なっ、なにが――」


「ブナッティ・バロール……貴様と私が一つになれば、領域外の超越者『アウターゴッド』になれる」


 シアエガの言葉が、バロールの脳を犯していく。

 グチャグチャにかきみだされて、

 バロールの意識が遠のいていく。


「ふざけ……っ……ぐっ――」


 抵抗の声がこぼれる。

 しかし、


「くそがぁあああああああああああああ――」



 ついには、意識を封じられ、

 人形となったバロールは、


「……」


 精気のない目で虚空を見つめながら、


「さあ、その手に私を掴め」


 シアエガの命令に従い、

 『まがまがしい斧(シアエガ)』を、その手に取ってしまう。


 斧を手にしたとたん、

 バロールは、


 ビクゥッ!


 と、体をエビ反りにして、


「ぶはぁ!」


 深く重たい息を吐くと、

 エビ反りで天を仰いだまま、


「実に素晴らしい……」


 ニィと笑って、


「ブナッティ・バロール……貴様のコアオーラは本当に素晴らしい。伝わってくるぞ。貴様が積んできた武の結晶――その全てが、肉体を通して、私の魂魄に伝わってくる」


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