アウターゴッド。

アウターゴッド。


(シアエガの無様な姿が、もし、演技ではなく、ガチで『愚か』なだけだったとしたら……まだ泳がせておいて、情報を吐かせるのも悪くないかもしれない……もちろん、演技だった場合を考慮して、奇襲に対する警戒は怠らず……慎重に、注意して……)


 決意すると、

 表情を調節して、


「そうだな。確かに、私でも届かない世界は実在するようだ。まさか、渾身のウルトラ異次元砲でも削り切れないとは……おそれいった」


「悲観することはない。私にダメージを与えた貴様の一撃は評価に値する」


「お褒めの言葉、いたみいる」


「よい態度だ、それでいい」


 シアエガは、そこで、ゴホンと間をとってから、

 上から目線で、偉そうに、


「おそらく、貴様は、異世界の王。真・第一アルファをのぞけば世界序列一位である『第一アルファ』の頂点に立つ最高位の超人。そうだろう?」


「あー……うん。そうそう。この私こそが、全世界最強の世界『第一アルファ』を統べる全世界最強の王ブナッティ・バロールである」


 軽くふんぞりかえってそう言うバロールに、

 シアエガは、気をよくしたようで、


「ふふん、やはり、そうか。さすが、私。この素晴らしい慧眼ぶり……自分で自分が怖くなる」


(……なに言ってんだ、このアホ)


 バロールが心の中で呆れかえっていることになど気づくことなく、


 シアエガは、ドヤ顔で、ニっと微笑んでから、


「運が巡ってきた。これほどの超人に巡り合えた奇跡。この男の力があれば、私も『アウターゴッド』になりえる」


(アウターゴッドになる……ねぇ……)


 バロールは、シアエガの言葉を一度咀嚼してから、


「シアエガ……様。一つ質問、よろしいですか?」


「なんだ?」


「アウターゴッドになりえる……というのは、どういう意味で?」


「我々コスモゾーン・レリックの悲願……真なる覚醒」


(……神化みたいなものか?)


「この世界に存在するコスモゾーン・レリックの大半が『グレートオールドワン(GOO)』。私もそうだ」


 そこで、シアエガは遠い目をして、


「グレートオールドワンは生命の頂点。偉大なる王の地位。間違いなく天上の高み。……しかし、それではダメなのだ。それでは満たされない。グレートオールドワンの壁を越えて、アウターゴッドの領域に達した時――その時、はじめて、私は真に満たされる」


(……アウターゴッドへの覚醒。……そいつは、おそらく、神化のような概念でもあり、かつ、『ゼノリカにおける天上と天下の関係性的なモノでもある』って感じか……)


 と、バロールが、状況を分析しつつ、


(だいたいは見えてきたな……)


 などと、心の中でつぶやいていると、


 シアエガが、

 両手を広げて、


「己が幸運に感謝しよう。貴様も、自身の激運にむせび泣くがいい。我らは出会えた。遥かなる世界へ辿り着くために」


 実に尊大な態度で、


「貴様の、その膨大な力を称え、私の使用許可を与える。どうだ、誇らしかろう」


「……使用許可? 意味がわからないので、誇りようがありませんな……私は、Cレリックについて詳しくないのです。申し訳ありませんが、少しご教授願えませんか?」


「知る必要などない。貴様に『知識』などという贅沢品は不要。貴様はただ、私の器となればいい」

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