いやだい、いやだい!

いやだい、いやだい!


「……大勢と行動するのは……イヤです……安西先生……」


 センは『情に訴える』という禁断の一手を展開させたが、


「平熱マンです。師匠」


 当然のように、サラリと流されて終了。

 しかし、センは折れずに、

 輝くようなオーラを放ちながら、

 遥か遠くを見通す目をして、

 『深い慈しみ』が込められた声音で、


「平熱マンよ。私は孤独を愛しているのだ。お前の心配はよくわかる。しかしな、我が弟子『平熱マン』よ。私は負けんよ。お前たち全員の親であるこの私が、有象無象に負けるものか。私は常に勝つ。その事実を、お前はその目で見てきたはずだ。わかってくれるな、我が愛弟子『平熱マン』よ」


 と、超越者モードで詰めていくが、


「とりあえず、50名ほど護衛につけますので、そのおつもりで――」


 完全に、なしのつぶてなので、

 センは、ついに、


「いやだい! いやだい! 僕は一人で出来るもん!」


 『駄々をこねる』という最終手段に出たが、


「知っております」


 バッサリといかれた。


 ――センのワガママを頑として却下してから、

 続けて、平は、


「親衛隊の編成と並行し、天下の者を斥侯として出し、この世界について調べさせます。基本的に指揮はゾメガに任せるつもりですが、何かご要望があれば、いつでも――」


 と、

 そこで、センは、


 それまでとは違い、

 ガチ『真剣な目』をして、


「護衛として何人か俺についてくるのは許してやる。正直、単独で動きたいが、約束は約束だからな。破りはしない。……しかし『天下を出す』のはやめておけ。何度も言うが、世界のために尽くしてきた者たちをカナリアのように使うのは許容できない」


 と、いまだ引かないセンに対し、

 平は、


「師よ、我々に出来ているのは『死ぬ覚悟』だけではございません」


 ピシャリと、


「天下も天上も、『師の軌跡』を心に刻んでいる者たち。どのような絶望を前にしても決してあきらめない不屈の魂。勝たなければ何も守れないという真理。偶然や奇跡に依存するのではなく、努力と根性で茨の道を切り開く覚悟。――刻み込まれております。えぇ、刻み込まれておりますとも」


「……」


 そこで、平は、

 センの目をジっと見つめ、


「あなた様の背を追いかけてきたボクたちを、ナメないでいただきたい」


 ハッキリと、そう言い切った。


「ゼノリカという概念――『ゼノリカという秩序を守るため』に『積んできた力』を『ゼノリカを守るため』に使えないのは、むしろ、何よりの不幸であると、ボクは愚考いたします」


「……だが、」


 なおも食い下がるセンに、


「過保護は不要。彼らの道は、彼ら自身で切り開くべきです」


 そう言い切った平熱マン。


 センは数秒だけ悩んだが、


「……『望む者』以外は絶対に出すな……」


 ついには折れて、


「絶対に強制はさせるな。圧力をかけて『行くしかない』みたいな空気にするのもなしだ。あと、カナリア扱いはダメだ。まずは『俺』がこの世界について調べる。その上で、天下の連中を出しても問題ないと判断した場合のみ出撃命令を出す。これは過保護とかじゃねぇ。純粋な命令だ。『俺の命が最優先だ』と言ってくれたことには感謝する。だが、俺の命令を全て無視するなら、こちらも一切譲歩しない。いいな?」


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