誰に口きいてんだ。

誰に口きいてんだ。


「だからこそ厳命する。お前は俺の宝……つまり、俺の所有物だ。勝手に壊れることは許さない」


「道具というのなら、ボクは盾になることを望みます! それはボク個人のワガママではなく、ゼノリカの総意!」


 そこで、平は息を吸って、

 より大きな声で、


「そして、道具は使わなければ錆びてしまうもの! 『師を守って死ぬ盾』こそがボクらの本懐――」


 そこで、センは、平を、強くにらみつけた。

 その強大な威圧感に、

 平は、思わずゴクっと息をのむ。


 平が黙ったのを受けて、

 センは静かなトーンで、


「いい加減にしろ、平。自分たちの『命の価値』を考えろ。お前らは、こんな『ワケのわからん世界』に殺されていい命じゃない。強さも高潔さも兼ね備えた人材なんて、そうそういないんだ。失うわけにはいかない」


「……『そんな我々』の頂点に立てる御方は、もっと希少でございます」


「俺は死なない。お前らと違い、俺は誰が相手でも勝つ。この世界の情報を奪取し、お前らを守りながら、ラスボスを殺す……俺ならば楽勝のミッション。このミッションで難易度が高いのは『お前らの安否』だけ。だから、ゼノリカを要塞化させて、完璧な守りを徹底――」


 そこで、

 それまで黙って平を見守っていたシューリが、


「死なない保証なんて、どこにもありまちぇんよね?」


 と、強めの口調で言葉をはさんできた。

 センは、眉間にシワを寄せて、


「誰に口きいてんだ。俺をナメるな。俺は――」


「あんたが『誰か』なら、誰よりも知っていまちゅ」


「ならば――」


 そこで、平が、

 あえて冷静さを徹底し、

 諭(さと)すような口調で、



「師よ、どうかボクの言葉に耳を傾けてください……今回ばかりは『すべての行動』を極めて慎重に行うべきでございます。『この世界』・『この状況』はあまりにも不気味。『もしもの時』のために、その尊き御身をお守りする盾は絶対に必要です」



 そこで、アダムが、


「平熱マンを盾にするだけではなく、迅速に情報を収集するために、天下の者たちを斥侯として出兵させるべきかと存じます。言うまでもなく、御身の安全が最優先。ハッキリ申し上げますが、それ以外はどうでもいい」


 その発言に対し、

 センはため息をはさんで、


「だからぁ……ああ、もう……なんなんだ、お前らは、アホの集団か? 少しは人の話を聞けよ、アホんだらぁ」


 イライラ口調で、


「まず、アダム! 少しは考えてからモノを言え! 天下なんか出せるワケないだろ。楽連や百済に属する連中の存在値は300前後だぞ。この世界の『総合的な脅威』が『どの程度』かは今のところまだハッキリしていないが、しかし、少なくとも『一匹』は『ハンパじゃない変態』がいる。さっき俺に上等をかましてきた『ウムル=ラト』とかいうゲロカスが出てきたら天下の連中は一瞬で全滅だ。あのゲロカスは、俺からすればただのゲロカスだが、お前らの視点じゃ、どんだけ束になっても勝てない最悪のゲロカスなんだ!」


 そこで、平が、懲りずに、


「お言葉ですが、天下の者たちは『ゼノリカのために死ぬ覚悟』を決めている者たちです」


「だからぁ……ああ、もう、なに、この無限ループ! こわくね?!」



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