開かれたゼノリカのゲート。

開かれたゼノリカのゲート。


(とりあえず、ゼノリカの入り口をどこに作るか……最大の問題はそこだな……この世界のどこに国があって、どういう状況で、どういう力を持った連中がいるのか……その辺を網羅してからでなければ怖くて入り口は出せない……)


 敵に対して恐怖は抱いていないが、

 ゼノリカが傷つけられることに関しては、

 異常なほど恐怖を覚えているセン。


(しかし、現状では、何も見えない……これが、すげぇ厄介……)


 この世界にきた瞬間から、

 センは、視界を拡散させようとしたり、

 感覚領域を広げて世界のシルエットを把握しようとしたりしているが、


 その全てが、はじかれてしまい、

 現状は、何もわかっていない。


(なんつぅか『この世界すべてが禁域』って感じだな……出力1000で固定されて、かつ、一寸先は闇……詳細は不明だが、『さっきのカス』や『コスモゾーン・レリック』とかいう謎の脅威が散乱していることだけは確定している狂気の地獄……えぐいな……確かに、前提だけを見れば、神界の深層どころの脅威じゃねぇ……いや、てか、そもそも、俺にとって、神界の深層は『名実ともに自分ん家の庭』だから、脅威なんてゼロなんだが……って、そんなことはどうでもいい)


 思考がぐるぐると錯綜する。

 情報が一気に増えすぎて、

 考えなければいけないことが多すぎる。


(まずは、何から手をつける……国、人、拠点……)


 ほんの数秒だけ悩むと、


(まずは、拠点だな……ゼノリカの入り口をどこに設置するか……いや、やっぱり、人と国か)


 未だ纏(まと)まらない思考が、あっちこっちそっち、


(もし『この世界』が『存在値1000のバケモノしかいない地獄』だったとしたら、ゼノリカの面々は『ちょっと歯ごたえがあるだけのエサ』にしかならない。この世界の情勢そのもの……まずは全体のレベル……その辺を調べてから『完璧安全』なところに拠点を――)


 などと過保護なことを考えていると、

 まるで『その過保護』をあざわらうかのように、


 キィン――と、硬質な音がして、


 『ドンッッ!!』という効果音とともに、






 センの背後に、

 『裏ダンジョン・ゼノリカへと続く扉』が出現した。


 『使用されずに倉庫へ保管されている無数の扉』の内の一つ。

 『Q‐8ゲート』。






「……ふぁ?!」


 心底驚いて、目が点になるセン。

 もちろん、すぐに、

 『慌てている場合ではない』と自分を持ち直し、


「と、閉じろ。ここに開くつもりはない」


 命じるが、

 しかし、

 扉はウンともスンとも、


「おい、ふざけるなよ……誰の命令に逆らっている。俺を本気で怒らせる気か?」


 オーラを発して凄んでみせても、

 まったく反応はない。


 扉は、どこか、おびえているというか、

 『自分もよぉわからんのです、旦那。勘弁してくだぁせぇ』

 とでも言いたげな気弱なオーラを発するばかり。


「……ちぃ……」


 仕方なく、

 センは、

 ――『平熱マン』へと通信魔法を繋ぎ、



「平か。俺だ……挨拶は不要、さっそく本題に……ん? 何を、そんなに喜んで……はぁ?」


 センの声を耳にしたとたん、

 平熱マンは涙ながら歓喜を叫んだ。


「落ち着いて喋れ。これは命令だ」



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