全員集合。

全員集合。


「平か。俺だ……挨拶は不要、さっそく本題に……ん? 何を、そんなに喜んで……はぁ?」


 センの声を耳にしたとたん、平熱マンは涙ながら歓喜を叫んだ。


「落ち着いて喋れ。これは命令だ」


 数秒かけて、落ち着くのを待ってから、


 よくよく話を聞いてみると、

 どうやら、現在の裏ダンジョン・ゼノリカには、

 消えたセンを心配し、

 『原初の世界に来ていた全ての面々』が集まっているとのこと。


 外で仕事をしていたUV1も、ドナも全員、あますことなく全員集合。

 ※ もともと『原初の世界に来ていないメンツ』はいない


 ゼノリカに全員集合の命令をかけたのはもちろんアダム。

 冒険の書を『扉』にセットした直後、

 忽然と消えてしまったセンを心配し、



『緊急事態だ! カスみたいな仕事は全部放棄して、今すぐ、帰ってこい! 一秒でも遅れた虫ケラは、重々々反逆罪で一族郎党皆殺しだぁああ!』



 何があっても対応できるよう即時・緊急召集をかけた。


 セン不在時のトップである『アダム&シューリ』は、

 センと違い『ゼノリカの面々を使いつぶすこと』に躊躇しない。


 人海戦術サーチ用としてはもちろん、

 必要とあらば、カナリアのように、ザコを前線に出して肉壁にもするし、

 無慈悲に『エネルギーを抽出するためだけの道具』として使い捨てもする。


 アダムにとってもシューリにとっても大事な相手は一人だけ。

 彼女たちのスタンスは、いつも一つ。



 ――センエース以外はどうでもいい。



 彼女たちにとってゼノリカなど、ただの道具。

 クソザコばっかりで『質』は低いが『数』だけはやたら多い、そこそこ便利な消耗品。



「……クソ過保護ども……恥ずかしいことしやがって」



 センは、軽く頭を抱えてから、


「まあいい……俺は無事だ。というか、俺の心配などしなくていい。無意味だ。――そんなことより、『Q‐8ゲート』をサーチして外にでろ。そこに俺はいる。あ、あと、集まっているならちょうどいい。他の連中には『ゼノリカ内部に何か変化はないか』を総出で探らせろ。以上だ」



 と、命じてから二秒後、



「主上様! ご無事で?!」

「だから、準備をしてからにしなちゃいと、あれほど――」


 ぐだぐだと姦しい女神二柱が登場し、

 ワーワー言ってきたのを、

 センが適度になだめていたところに、




「――お待たせして申し訳ありません、師よ」




 救いのヒーローが現れた。

 センは、これ幸いとばかりに、

 アダム&シューリから視線をそらし、


 この騒がしい空気を払拭しようと、

 少し大きめの声で、

 テンション高めに、




「遅ぉおおい! 『俺が命令する3日前から赤絨毯を引いて待機しておく』ぐらいの気概をみせろ! それが俺の弟子になるということだ!」




 空気をかえるための、まろやかなギャグ。

 それ以上でもそれ以下でもない戯言だったのだが、

 平は、



「おっしゃるとおりでございます。心から陳謝いたします。この命でもって謝罪を――」



 『しごくごもっとも』という態度で、真摯に頭を下げて、

 スっと剣を抜いて、自分の首に向けようとする平。


 センは、ほんのり渋い顔をしてから、



「……あー、俺からしかけておいてなんだが、悪ノリはそこまでだ。さっそく本題に入るぞ」



 気まずそうにそう言った。


 『やかましい女二人から逃れるため』、

 プラス、

 『緊急事態ではあるが、師はいつも通りである』

 という所を見せようとしたものの、


 大胆に空回りをしている――というわけのわからない状況が現状の真実だった。

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