社会勉強の時間は終わり。

社会勉強の時間は終わり。


「もう無駄だってことはわかっただろう。さあ、社会勉強の時間はここまでだ。これ以上、俺に抵抗するなら殺す。そこにいる女どもも殺す。俺は決して理不尽な悪者じゃないが、邪魔してくるやつは殺す。俺はそうやって生きてきた」


 その発言に対し、

 センが、


「誰にだって『譲れない生き方』ってのがあるよな。わかる、わかる」


 うんうんと頷きながら、そう言って、


「そんじゃまあ、『そいつ』をぶつけあわせようか。『お前の譲れない生き方』と『俺の譲れない生き方』……どっちが勝つか、そういう戦争を、いざ、はじめようじゃないか」


「……バカじゃねぇのか。今からはじまるのは戦争じゃねぇ。虐殺だ。これから、お前らは、俺に殺されて、全てを奪われる。それだけの話なんだよ」


 言って、

 78番は、

 センBに向かって、再度殴り掛かった。


 先ほどと同じ展開になると疑っていない78番。

 追撃方法についてのみ頭を働かせて、

 だから、


「ぐぃっ!!」


 カウンターをくらうだなんて、

 まったく思ってもいなかったから、

 グラリと、大きくよろけて、


 ――だから、そこに、


「いつだってそう。……グワっと熱くなると……少しだけ、世界がスローになる……」


 ガツンッッ!!


 と、センBの拳が、78番の顔面にクリーンヒット!


 魔力の推移が雑で、

 オーラの練り方もお粗末。


 極限まで『弱体化』されたセンBは、

 すべてが矮小で粗悪な分身。


 けれど、

 その根源にあるのは、


 この上なく尊き神の王、

 いと美しき月光の龍神、

 ――舞い散る閃光、


 だから、当然、


「俺より強い程度の雑魚に……俺は負けない……っ」


「ぐほっっ!!」


 二発目――『渾身の左フック』をいただいた78番のアゴが上がる。

 センBはとまらない。


「俺は偉大なる最強神の化身! お前なんかに負けるわけがない、天上のアバターラ!」


 怯んだ78番をボッコボコにぶん殴るセンB。


 勢いは良かったのだが、

 いかせん、火力が低すぎたため、



「……調子にのるなよ、ガキ……」



 軽く鼻血を出してはいるものの、

 しかし、たいして大きなダメージを受けている様子はない78番。


 景気よく自分を殴っていたセンBの腕をつかみ、


「ザコの分身風情が……俺に勝てるワケないだろ。……砂漠のシーバンをなめんじゃねぇ」


 北部の砂漠地帯を根城にしているバウンティハンター『砂漠のシーバン』。

 トーン共和国の領地内ではちょっとした有名人。

 酒好きで粗野で口が悪い――けれど、どこかにスマートさを感じさせる傑物。

 どんな無理難題も平然とこなしてみせる、名うてのバッドアス。


 ちなみに、『火龍会のサーバン』の弟である。

 ※ 勇者ハルスが魔人になった時に出会ったヤクザ。




「うぐ……ぬっ……」



 どんなに気合を入れようと、

 センBとシーバンの間にある『明確な実力差』を埋めることは難しい。


 センBは必死に抵抗したが、

 さすがに、


「く、そ……くそぉ……」


 勝てるわけがなく、

 ボロボロの姿で膝をつく。


 肩で息をして、

 たまに、オエっと血をはきだす。


 そんなセンBを見下ろしながら、

 シーバンは、


「……もういいだろ。わかったはずだ。お前じゃ、どうあがいても、俺には勝てない」

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