偉大なる使徒メービーの弟子センエース、爆誕。

偉大なる使徒メービーの弟子センエース、爆誕。


「これで、ぬしは、もう試験を受ける必要などない。というわけで、明日、朝五時に、フーマー東方の霊山に集合じゃ」


「……は?」


「話は通しておくから、ぬしは、ただ、正午発フーマー行きの船に乗るだけでよい。ああ、当たり前の話じゃが、一応言っておこう。そこの女二人を連れてくるのは禁止じゃからの」


「……あのぉ」


「ぬしは本当に豪運じゃ。なんせ『この私に認められるほどの才』をさずかって生まれてきたのじゃから」


「……」


「あらためて、おめでとう。今日からぬしは、正式に『私の弟子』じゃ。その称号は『冒険者』などというチンケな称号とは比べ物にならん」


「……」


 『なんと言ったものか』と思案顔になるセン。


 その向こうで、

 メービーは、

 どこか遠くを見ながら、


「明日から厳しい訓練が始まる……間違いなく『ぬしの想像を絶する厳しさ』じゃ……しかし、ぬしならば耐えられるじゃろう。そして、いつの日か……」


 そこで目をとじると、

 結局、最後まで言い切ることなく、

 センに背中を向けて、メービーは、どこかに去っていった。


 『無言で何かを語りかけてくる背中』

 その熱い背中を見送りつつ、

 センは、


(……んー、冒険の書をくれた『優しいお爺さん』をシカトするのもどうかと思うし……まあ、アバターラでも送っておくか……)


 と、心の中でつぶやいてから、


「……ふふ」


 手元にある冒険の書を見つめて、


(まだかなり先になると思っていたが……ひひ……マジで助かった……)


 心の中で安堵のため息をついていると、

 隣にいるシューリが、


「いやぁ、本当に、ガチで、マジで、真剣に助かりまちたねぇ……正直、虫ケラとのお遊びには心底辟易していたところでちゅから」


 続けてアダムが、


「主上様の御力を考えれば当然の事かと存じます。というより、献上してくるのが遅すぎると言ったところでしょうか。――なにやらワケのわからん勘違いをしていたようで、そこが少し気になりましたが、まあ、年も年というコトで、本格的にボケているだけでしょう。相手にする必要はないかと存じます」


 二人の言葉を受けとめながら、

 センは、


「カギは手に入れた……あとは、開けるだけ……くく……さぁて、あの扉の向こうには、いったい何が――」


 などと、浮かれていると、

 そこで、『不穏』が近づいてきた。


 いつだってそう。

 絶頂期にこそ『足元をすくいにくる悪魔』が登場する。



「おい、そこのガキ」



 受験番号78番の屈強な男が、

 ニタニタ顔で近づいてきて、


「話は聞かせてもらった。試験官にワイロを渡して冒険の書を買うとは、なんとふてぇ野郎だ」


「ぜんぜん話聞いてねぇじゃねぇか。俺は、あの『優しいお爺さん』に認められて、冒険の書を手に入れたんだ」


「ふん、なんと喚こうが無駄だ。お前は『不正の現場』を俺に抑えられてしまった。俺は悪を許さない正義の使者。よって、お前の罪はここで、さばかれる。俺は、問答無用で『お前がおかした不正』をただす」


「……ようするに?」


 問いかけると、

 78番は、ふんぞり返って、堂々と、


「お前が不正に手に入れた冒険の書を、正義の名のもとに強奪し、闇ルートで売りさばく」


「……見事な正義っぷりだな。ぐぅの音も出ないとはまさにこのこと……」

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