究極超天使、天童久寿男。

究極超天使、天童久寿男。


「頼むから、もう一度だけひかせてくれ! せめて、ソンキー・シャドーの亜種みたいな、使える召喚獣を――いたっ!!」


 背後から後頭部をはたかれ、

 反射的に、視線を背後に向けてみると、

 そこには、スラっと背の高い細マッチョで精悍な天使が立っていて、



「誰が使えない召喚獣だ。ナメるなよ、クソガキ」



 ゆっくりと首をまわしながら、そう言った。


「……お前……もしかして、クズォテンドゥか?」


「……ああ」


 返事をしてから、

 一度、ンンっとのどを温めて、

 まっすぐに、ゴートの目を見つめながら、


「俺こそが、熾天使の首席にして天使軍総大将、究極超天使『天童 久寿男(てんどう くすお)』だ」


「……てんどう……え? クズォテンドォじゃ……」


「おっと……『本来の力』だけではなく『名前』まで取り戻せたのか……どうでもいいといえば、どうでもいいんだが……まあ、真に自由になれたという感じがして、悪くはない」


「……」


「困惑した顔をしているな。そんなに悩む必要はない。『お前ではどうしようもない絶望』をもどうにかできる『最強の援軍』がきた。それだけの話だ」


 クスオの自信満々な発言を受けて、

 ゴートは、眉間にしわをよせ、


「……まるで、お前が『俺よりも強い』みたいな言い草だな」


 いうと、

 クスオは、小バカにしたような半笑いで、


「はっ、当たり前の話をするなよ。この俺が、お前みたいな『坊や』よりも下なわけがないだろう」


「アホか。今の俺より強い召喚獣なんているワケがないだろ。今の俺がどのくらいの高みにいると思っていやがる」


「通常のリミテッドバージョンなら、確かに、お前の足元にも及ばないだろうが、しかし、今の俺に、くだらない制限はかかっていない。ならば、舞えるさ。お前よりもはるかに美しく」


 そこで、クスオは、オーラを開放させた。

 荘厳で、軽やかで、そして、何より、途方もなく美しい輝き。


「……ぁっ……」


 圧倒されて、ゴートは声をもらすことしかできなかった。

 究極超天使『天童久寿男』は、今のゴートですら届かない遥か高き場所にいる、強大な天使だった。


「これでも、かつては、『すべての命』を背負って『大いなる混沌』に抗った天使の一等賞。ガキには負けねぇよ」


 言ってから、

 左手首にまかれているロザリオを、左腕ごと右手で握りしめ、


「――デビルメアトランク・セラフレア/トロイメロイ、起動」


 そう宣言すると、

 クスオの背中に、まがまがしい『剣翼』が顕現した。

 天使が駆るには少々コワモテが過ぎるシルエットとカラーリング。


 だから、当然のように、ゴートが、


「天使なのに、デビルって……どんなセンスしてんだよ……」


 ボソっとそうつぶやいた。

 その言葉を受けて、

 クスオは、ガチでイラっとした顔になり、


「うっせぇ、ボケ……センスには触れんな」


 そう呟いてから、

 気をとりなおして、


 悠然と、歩を進めつつ、

 ゴートに対して背中で語る。


「あいつの名前、確か、P型センキー・ゼロオーダーだったか? あの『敵』は『俺たち』が狩るから、ガキは引っ込んでいろ」


 そう言った直後、

 クスオの周囲に、山ほどのジオメトリが顕現する――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る