俺は、P型センエース3号。

俺は、P型センエース3号。


「俺に敗北を認めさせない限り……永遠に、リーン・サクリファイス・ゾーンが解放されることはない」


 そんなことを言い出した。

 ゴートは、少しホっとしながら、


「急に説明してくれんのか。『唐突すぎてワケがわからない』って現状に変化はないが……けど、まあ、助かった。さあ、もっと、いろいろと教えてくれ。『敗北を認めさせる』ってのは、殺せってことか? それとも、287期ハンター試験の最終試験みたいに、殺したらアウトか?」




「俺は……ゴート・ラムド・セノワールの剣……」




「ぉ、ぉお……」


 まったく会話になっておらず、

 だから、ただひたすらに困惑するしかないゴート。

 しかし、リーンの命がかかっているため、

 投げ出すこともできず、

 だから、ゴートは根気よく、


「んー、え~っと……うん、OK、OK。なるほど、わからんけど、まあ、うん……お前は俺の剣。オールオッケーだ。さあ、次の情報に行こう。できれば、もう少し、かみくだいて説明してほしいな。さあ、深呼吸してぇ……ゆっくり、丁寧に……『この面倒ごと』の『処理方法』について解説してくれ」


「俺はP型センエース3号……それ以上でも、それ以下でもない……」


「おい、急に投げやりになるなよ。もう少し頑張って――」


 と、そこまで言った時点で、

 P型センエース3号の視線がキっと強まって、


「俺は! ゴート・ラムド・セノワールを倒す者!!」


 そう叫びながら、

 両手にオーラを込めながら、殴りかかってきた。


「……おいおい……お前は、俺の剣じゃなかったのか? 俺の剣なのか、俺の敵なのか、別にどっちでもいいんだが、しかし、せめて、どっちかにはキャラを決めてくれや」


 鬱陶しそうな顔をして、

 ゴートは、P型センエース3号の拳をよけた。


 プロパティアイでステータスを見ることも、サイコイヴ‐システムで解析することもできなかったが、しかし、一度でも殴り合えば、だいたいの力量くらいはわかる。


(存在値的に言うと……『10』くらいか……なんで、こんなカスを解析できないのかわからないが……)


 と心の中でつぶやきながら、

 ゴートは、P型センエース3号の攻撃を、ササっといなしていく。


 P型センエース3号の存在値は10前後。

 つまりは、本気で相手をするまでもない虫ケラ。

 だが、ゆえに、


(こいつが、本当に、リーンを開放するためのカギなら……おそらく、『殺害』は悪手……なぜならば、『こいつを殺すこと』はあまりにも簡単すぎるから。ここまで手の込んだ『いやがらせ』を仕掛けてくるヤツが、そんな簡単な条件を課すわけがねぇ……つまりは確定でワナ)


 そう深読みしてしまう。

 そして、だからこそ、ゴートには手がなくなってしまう。


(敗北を認めさせる……キチンと実行しようと思うと、なかなか手段が難しいミッション……『ゴ〇さん』みたいに、ボコボコにしようがどうしようが頑として『認めない』と言い張られてしまうと手がなくなる……こんな完全にイっちゃっているようなヤツに拷問したところで、おそらく効果はないだろうし……やべぇな……このミッション、意外と前提で詰んでるぞ……)


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