――活動限界に達しました――

――活動限界に達しました――


「ぶ、ぶたぁあああ! てめぇ! なにして――」

「言っただろう。私は常に強い者の味方だと」

「強者は俺だぁ! てめぇが味方すべきは俺――」

「いや、ミシャ(業)の方が強いよ。まあ、そうでなかったとしても、私はミシャ(業)の味方をするがね」


「あぁ?!」



「かわいい女の子と、気色悪いキチガイ、どっちの味方をするかなど、考えるまでもない」

「く、くそぶたがぁ……っっっ!!」



 血管が切れそうなほどの怒り。

 そんな圧縮された時間も、長くはもたない。

 目の前には、


「ありがとう、モンジンざえもん」


 これ幸いと、深く丁寧に、拳へ想いを込めなおしているミシャ(業)。


 感謝のメッセージを遠慮せずに受け取ったモンジンンざえもんは、

 ニヒルに微笑んで、


「救い料、100億万円。ローンも可」


 最高にクールな締めのセリフを吐くと、

 『P型センキーを止める』という呪縛だけを残して、世界に溶けていった。

 モンジンざえもん一人では不可能だった、想いの結晶。

 すべての因果が結集して、

 だから、P型センキーは、


「くそがぁあああ! 動け、動け、動けぇえええ! なんで、こんなっ……ぐぅ……くっそ、あの豚ぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 叫びは霧散するばかりで、

 決して形にはならない。


「もう一度だぁああ! 発動しろぉおお! 言うまでもなくピンチだぁあ! 何をしている、センエースエンジン! 俺をつき動かせぇええ! お前なら出来るだろぉおお! おい、聞いてんのか、ポンコツ、ごらぁああああ!!」


 悲鳴という懇願。

 だが、



 ――活動限界に達しました――



「はぁあああああああああああああ?!」


 ――本物とは違うんでね。限界はあるさ、そら――


「……な……」


 ――ここまで手助けして、それでも勝てないってんなら、

     たぶん、それがお前の限界なんだろ。受け入れな――


「……ど、どいつも……こいつもぉおおおおっっ!! ふざけんなよ、くそったれぇえええええええ! ここまでやったんだぞ! 全部つかったんだ! これで、勝者になれなきゃ嘘だろ! なぁ! そうだろぉおおおおおおおおおおお!」


 怒りで真っ赤になる顔。

 その内部では、焦りの脈動。

 バクバクと、恐怖で悪熱(おねつ)がうねる。

 そんな、キッチリと準備が整ったP型センキーという名のサンドバッグに、






「――行くぞ、P型センキー。これが! あたしの全部!!」






「ちょ待っ、マジで、ここは、いったんティーブレイクをはさんで、一緒に未来志向で解決の道を――ぐっがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」



 ミシャ(業)は、想いの拳をブチこんだ!!


 衝撃による震動が、未来の砂漠みたいに、シンシンと眠る。

 まるで降り止まない『涙の雨』みたい……



「……センエース。大丈夫。あんたは、最強のヒーロー。こんな『安いパチモン』ごときに負けるはずがない、本物の……すべてを包み込む光」


 消えゆく直前、ミシャ(業)は、メッセージを残した。

 ミシャ(業)が発信した『狂気的な愛』は、

 空気に触れて酸化して、

 だから、空しく熔けて、淡く薄れて、


 しかし――

 ――届く。






 ――『狂愛のアリア・ギアス(原初の愛)』、発動――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る