最終回カウントダウン0。『無情』

最終回カウントダウン0。『無情』


(考えろ……どうすれば、この絶望を殺せる………どうすれば……っっ!!)


 と、必死に頭を回しているセンの耳に、


「……セ……ン……」


 シューリの声が届く。


 死にかけの状態で、

 ダラダラと、腹部と口の両方から、『神呪に穢れた血』を垂れ流しつつも、


「やく……そく……」


 必死になって、

 想いを伝えようとしている。


 ――その魂魄と全身全霊で『届かせよう』としている。


 現状のシューリは、ただ心臓を潰されただけではなく、

 『回復できない&徐々に肉体が削られていく』という『神呪』をぶちこまれているので、

 死を回避する術がない。

 そんな絶望下でも、

 彼女は、まっすぐな目で、

 わき目もふらず、センだけを見つめて、


「……わすれ……るな……」


 シューリが伝えたいこと。

 それは、センエースに押し付けた命令。


 『もう二度と負けるな』


 つまりは、エール。

 あえて言えば、イカれたワガママ、狂気のおねだり。

 『私を甲子園につれてって』という剛毅なクサビに匹敵する、鬼嫁的な覚悟の呪縛。


「……あんな……カスに……」


 シューリは、最後の最後まで、

 眼球に強い光を込めて、


「……まけるな……」


 そう言い切ったところで、

 彼女の背後にまわっていたP型センキーが、

 ニィと黒く笑って、



「相変わらず、お前は無茶なワガママばかりだな、シューリ」



 そう言ってから、

 先ほどと同じく、

 口をガバっと大きく開いて、


「いただきます」


 迷いなく、くらいついた。

 死にかけているシューリが抵抗など出来るはずもなく、

 あっさりと、あっけなく、

 シューリは、

 P型センキーに丸のみにされてしまった。


 グチャグチャと、少しだけ咀嚼して、

 ゴクンと飲み込むと、


「はっはーっ!! アダムほど爆発的じゃないが、さすがは、女神の一等賞! バッキバキに、あがるぜぇ! はっはぁあああああ!」


 薬でハイになったみたいに、

 P型センキーは、天を仰ぎ、

 恍惚の表情で、



「高く、高く、高く、高く、高く、上がる! 昇華されていく! マジか?! まだ、あがるのか! とまらねぇ! やべぇ! シューリのオーラ自体は大したことないが、アダムとシューリのシナジーが、とにかく、えげつねぇえ! 俺という個に設定されていた限界値を殺してくる! つぅか、死んだ! 俺にはもう限界などない! 狂気の向こう側まで膨らんでいく! やばい、やばい、やばい、やばい、やばいぃいいい! まだ上がる! もっと上がる! はっはぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



 オーラの質が流動的になって、

 ユラユラと、テラテラと、

 性質がどんどん移り変わっていく。


 そして、


「……はぁあ……」


 その揺らぎが落ちついた時、

 P型センキーは、


「……ん……」


 何かを納得したかのように、

 一度頷くと、

 自分の両手を見つめつつ、グーパーグーパーしてから、


「この上なく……尊いと……思わないか?」


 恍惚の表情で、

 天を仰ぎ、


「……『天元突破した最強』という『概念の最果て』……」


 声が光に包まれている。

 今のP型センキーは、あまりにも尊い。


「もちろん、お前の視点で言えば、大事な女を奪われた形になるから、拍手喝采とはいかないだろうが……ここは、一つ、そういう個人的な視点を捨てて、まっすぐに、俺を見つめてみろ。どうだ? ……震えないか? 恐怖からではなく、この、いと高き尊さにあてられて」


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