最終回カウントダウン1。『狂乱』

最終回カウントダウン1。『狂乱』


 P型センキーは、

 アイテムボックスから、一枚の魔カードを取り出して、

 また少しだけ逡巡を見せたが、


「……毒を食らわば皿まで……禁止魔カード、使用許可要請」


 そう言うと、先ほどと同じく、


 ――許可する――


 という声が聞こえてから、




「――『はないちもんめ』――」




 言いながら、禁止魔カードを破り捨てる。

 すると、

 P型センキーの体が、紫銀のオーラに包まれた。


 自分が、奇妙な色のオーラに包まれたことを確認してから、

 P型センキーは、

 意識を失っているアダムの体を掴み、


「……いただきます」


 そう言ってから、口を大きく開けた。

 開いた口がメリメリと音をたてて広がっていき、

 通常の口のサイズの十倍以上になったところで、

 バグっと、アダムに食らいつく。


 頭から、丸のみ。

 何度か咀嚼してから、

 ゴクンと飲み込んだ。


「ははは! きたきたぁ! いい! 溢れる! 戦闘力はカスだが、潜在能力はやはり、とんでもなく高い! 歪みにしかならない戦闘力の部分は排除して、とにかく、オーラだけを! アンリミテッドナイン(限りなく100%に近い純度)にまで圧縮して奪い取る!」


 ブーーーン……

 と、鈍く震動しているような音がして、

 P型センキーの魂魄に変革が起きていく。


 その間も、

 センエースはピクリとも動かない。

 ずっと、必死に、最大級の抵抗を続けているのだが、

 どうしても、体が言う事を聞いてくれない!


 焦りを抑え込み、

 呪いに抵抗しながら、

 必死になって、冷静に、

 センエースは、


(まだだ! あの禁止魔カードとやらの性質はよくわからんが……しかし、見た感じ、奪われただけ! 死んではいない! サイケルの時と同じ、奪い返せば、再生は可能!)


 焦って狂ってしまわぬように、

 必死で自分を御しながら、


(問題は、アダムを奪われた事で、P型センキーの存在値が、さらに底上げされてしまったこと。……さ、さすがに、ここまで差が開いてしまうと、まともにやっていたら、絶対に勝てない)


 先ほどまでなら、まだ、初見殺しの超必殺技オンパレードで押し切ることも不可能ではなかった。

 しかし、アダムという、とてつもない可能性を奪われたことで、

 『まともな戦いでの勝利』は不可能となってしまった。


(……どうする……どうすればいい……考えろ……)


 超高速で回転する頭。

 焼き切れんばかりの回転速度。

 この瞬間に限っていえば、その加速値は、トウシの演算速度の全速を超えていた。


 土壇場での爆発力において、センエースに勝る者はこの世に存在しない。

 とはいえ、


(やべぇ……自力だと、どのルートでも、勝ち目がねぇ……こうなったら、俺も、ソンキーと合体して……)


 と、最後の手段を模索してみるが、


(くっ、ダメだ……どうあがいても、第一アルファと接続できない……つぅか、領域外の『外』にコンタクトできねぇ……)


 いまだ、センエースは、第一アルファに拒絶されたまま。

 それどころか、そもそも外にアクセスできないし、

 ゼノリカに救援要請を送ることも出来ない。

 つまり、どうあがいても、ソンキーにSOSは送れないってこと。


(考えろ……どうすれば、この絶望を殺せる……対処が遅れれば遅れるほど、アダムを蘇生させる難易度が上がっていく……なるべく早く、P型センキーを殺す方法……どうすれば……っっ!!)


 と、必死に頭を回しているセンの耳に、


「……セ……ン……」


 シューリの声が届く。



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