なるほど、これがセンエースか。

なるほど、これがセンエースか。


「……『センエース』をナメんじゃねぇ」


 最後にそう言って、

 ゼッキは、異次元砲を放った。


 迸(ほとばし)るエネルギーの乱舞。

 この一撃は強大。


 P型センエース2号は理解した。

 耐えられない。

 絶対に無理。


 ――時間が圧縮された。

 いわゆる走馬灯。


 死を前にして、全てがスローになる。


 そんな中で、


 P型センエース2号は、


(……?)


 『自分』に対して違和感を覚えていた。


(……なんだ……)


 圧縮された時間の中で、

 グツグツと、湧き上がる情動を感じる。


 その熱は、まるで、宇宙の開闢(かいびゃく)みたいに、

 『コンマの下に、数え切れないほどの0が並ぶ一瞬』を経て、

 一気に、震えるほど、爆発的に、膨れ上がった。


「……俺はヒーローじゃない……」


 さらに時間が圧縮されている。

 『一瞬』という概念そのものをコンパクト化させたような、

 そんな、理屈や原理といったシステムそのものを冒涜する虚空の中で、


「それでも……叫び続ける勇気を……」


 P型センエース2号は、

 叫ぶ!






「ヒーロー見参!!!」






 叫びに呼応して、

 P型センエース2号の『深部』から、

 滾(たぎ)る『何か』が溢れて弾け……


 ダムが決壊したように噴出した『想いの結晶』は、

 P型センエース2号の右手に宿り、

 世界を包み込むような閃光を放つ。


 ――P型センエース2号は、


「ぁあああああああっっ!!」


 ゼッキの異次元砲が、P型センエース2号をさらう直前、

 特異な輝きを放っている右手で、

 ゼッキの異次元砲をぶんなぐった。


 『いったい、どうやったのか』と後で聞かれても答えられないが、

 とにかく、この時のP型センエース2号は、

 死滅不可避な異次元砲を、

 その拳一つで黙らせた。


 異次元砲が、どの属性にも絶対に無効化されないきわめて万能な『無属性』かつ貫通タイプの照射であるコトなど『知ったこっちゃない』と言わんばかりのワガママな一撃。

 P型センエース2号の右腕に殴られた異次元砲は、


 パァァァァァァアアンッッ!


 と、膨らませすぎた風船のように弾けて消えた。

 『その瞬間における世界』を支配したのは、無粋な異次元砲の破裂音だけで……



「……はぁ……はぁ……」



 自分が何をしたのか、さっぱり分からないと言いたげな表情、

 ゼッキよりも明らかに驚いている顔で、

 P型センエース2号は、

 『既に耀きを失っている自分の右手』を見つめながら、


「……なるほど……これがセンエースか……ムチャクチャだな……」


 呆れ切った顔で、ボソっとそうつぶやいた。


 そんなP型センエース2号に、

 ゼッキが、


「いま……何をしたんだ?」


「……」


 問われるが、

 もちろん、一つも理解できていないP型センエース2号は、沈黙をはさんでから、


「知るか……俺に分かるはずがない。……逆に聞きたくて仕方がない。俺はいったい、何をしたんだ? 俺には絶対に分からないが、お前なら分かる可能性があるから、少し考えてみてくれ」


「……すげぇメチャクチャ言ってんな……お前、今、自分が言った事を、一度、文章にしてみろよ。そうすれば、自分の発言がいかにバグっているか理解できるはずだから」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る