戦闘力評定D。

戦闘力評定D。


「さてさて……いい感じに魂も温まってきたことだし……そろそろ、本格的に殺し合ってみようか」


 阿修羅ゼンは、軽く肩をまわしつつ、首周りの血の巡りにも考慮しながら、

 ググっと、『剣を握っている手』に力を込め直す。

 気血が充実して、

 テンションが上方修正されていく。


「ほいほいほいっとぉ!」

「ぐぅ! ぬぅう!」


 剣で暴れる阿修羅ゼンと、

 防御に徹するP型センエース2号。


 阿修羅ゼンは、魔力で底上げされた剣を、決して悪くはないムーブで振りまわす。

 まったくもって美しくはないが、

 しかし、最低限の下地は出来ている剣技。


 踏み込み足に体重を乗せて、

 一つ一つの、局所的な円運動を滑らかにすることで、

 全体的な弧が綺麗な丸になる。

 まるで、円周率が、3.05より大きい事を証明しているみたい。


「おいっ、ちょっと待て! ゼン! お前、強すぎるぞ! どうなっている?! お前の『この時期における戦闘力評定』は『D』が限界だったはずっ!」


 戦闘力をデジタルに測ることは出来ないが、

 『おおざっぱに見積ったら、まあ、だいたいこのくらい』

 という、『ざっくりとした視点での評価』をつけるくらいなら、できなくもない。


 『戦闘力評定D』は、『決して弱くはないが、強いかと言われると微妙』というライン。

 ちなみに、この評定は、勇者ハルス・レイアード・セファイルメトスを『最高評価のA(成績でいうところの『優』)』と判断した場合の基準。


 仮に、センエースやソンキーといった究極の闘神達を『最高評価のA』と評定してしまった場合、当然だが、ハルスもゼンも、『Zマイナス』を大幅に下回った『弱過ぎて測定不能』という、無残な落第点となってしまう。


「……『俺の、この時期における戦闘力評定』って……なんだ、それ。お前は、あれか? 『俺が十五歳の時は、このくらい強くて、16歳の時は、このくらい強い』……みたいな一覧が分かっているってことか?」


 そんな阿修羅ゼンの問いを、

 P型センエース2号は、一切シカトして、

 ぶつぶつと、


「こ、この強さは、どう考えても、『Cマイナス』を超えている……」


 自分の世界に入り込む。


 ちなみに、このランクは、

 下から『Dマイナス』『D』『Dプラス』『Cマイナス』『C』『Cプラス』

 と上がっていくので、

 現在のゼンは、P型センエース2号が想定したラインよりも、

 『2段階』ほど強いという事になる。


「おかしい……こんなはずはない……本来のゼンの素質を考えれば、この時期にDの評価をつけることすらありえないんだ……『最も大甘に見積もった上での限界値』がDのはず……なんだ、これは……このズレはいったい……」



 ※ 解。ゼンは、センエースの影響を強く受けたフッキとの闘いで、ソル・ボーレの想定を大幅に超える成長を遂げた。

 ゼンが『センエースの命令を受けたフッキ』と闘って大幅に成長する、というのは、ソル・ボーレの中でも、想定の範囲内だったが、

 ――フッキのインテリジェンスが、センエースという輝きによって、大きな花を咲かせ、その流れを受けて、ゼンも限界以上に開かれる――

 という未来(現在)までは予測できなかった。


 いつだって、そう。

 センエースの影響力は、ソルの想定を超えていく。


 ――そうでなければ、話にならないから。

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