ウラスケの本音。

ウラスケの本音。


「ウゼぇなぁ……見えているが、反応しきれない速度……つまりは、俺の一歩上……」

「正しい理解力は尊い」

「上から言葉を降らすなよ。払いのけるのがダルいんだ」

「答えは出た。貴様は私に勝てない……世界は終わった。全てを受け入れろ」


 言いながら、

 バグが、ソンキーに向かって、

 エネルギー弾を放とうとした、

 その時、






「ディザスター・レイ!!!」






 声の直後、バグの背後から、照射が飛んできた。

 それなりの高威力エネルギー波だったが、

 今のバグからすれば、低次元のお遊戯だった。


 振り返ることもなく、

 薄いバリアを張るだけで消失させる。


「……タナカウラスケ……なぜ、私に攻撃する?」


 冷たい視線を送られて、

 ウラスケは、


「わけのわからん虫ケラ、ごらぁ……調子に乗って、なにムチャクチャしてくれてんねん……」


 まだ、じゃっかん朦朧としているが、

 しかし、強い目線で、バグをにらみつけ、




「かえせ……『その二人』は、『ぼくの女』なんじゃい……」




 つい、ポロっと本音をもらしてしまったウラスケに、

 バグは、とうとうと、


「……高瀬ナナノと繭村アスカなら、私の中で、一つになっている。かえすもクソもない」


「なにが一つや……雑音と異物の受け皿にされとるだけやないか……」


「それは、ただの疑心暗鬼。うがちすぎて、現実が見えなくなっているだけ。私の中で、二人は満たされている」


「俺と一緒だった時までは、まだ、あの二人は、あの二人の意識を残しとった……けど、今は、ただ犯されとる……ただ、全てを奪われて……好き勝手やられとる……あの二人がムチャクチャされとるんを黙って見とる訳にはいかん……絶対にかえしてもらう」


「……はっ……威勢だけは、いつも一丁前だな……で? 実際のところ、どうする? 神気の一つも練れない矮小な貴様では、私に抗う事などできない。私からすれば、そこらを這いずるゴキブリと貴様との間にはなんの差もない。ただカサカサと目障りなだけで、大きな障害にはなりえない」


「確かに、いまのぼくでは何にもできん……けど……」


 そこで、ウラスケは、

 ギリギリと奥歯をかみしめてから、


「トウシ……ぼくと合体せぇ」


 そう懇願した。


 ウラスケの覚悟を見たソンキーは、

 己の中のトウシと、部分的にスイッチして、


「合体ねぇ……その心は?」


「これまでの流れを精査した解答。あんたとソンキーのシナジーは完璧や。けど、一個だけたりんもんがある。それは、ぬぐいきれない歪み。ぼくなら、それを補える。あんたとソンキーとぼくが一つになれば……誰にも負けん」


 ウラスケとトウシの会話を、

 バグは黙って聞いていた。

 矮小な小物のあがきを見守る姿勢。


 『どうにもならない現実』をどうにかしようともがいている様は、

 バグの魂に、震えるような愉悦を与えた。

 『このために産まれてきたのだ』とすら思える、激烈な悦楽。



「……残念やけどなぁ、ウラスケ。あのバグとワシらは違う。誰もが皆、合体した分だけ強くなるわけやない。今のお前と合体したところでタカが知れとる。というか、普通は合体したら弱くなんねん。たいがい、ちょこっとステータスの数値が上がるだけで――」


「ぼくをナメるのもええ加減にせぇよ、トウシ」

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