ガキのワガママ。

ガキのワガママ。


「ぼくは、凡人でありたかったから、妙な力を手に入れたから言うて、はしゃいだマネはせぇへん」


(こいつが、そうだったとしても、他の奴も、そうだとは限らない……)



 人は、巨大な力を手に入れて、使わずにいられるほど強くない。


(それとも、もしかしたら、携帯ドラゴンは、こいつのような、ある意味で、聖人君子のような、無害の者にしか渡らないようになっているのか……)


 虹宮は、数秒、頭を回転させたが、


(現時点では、いくら考えても分からないことだな)


 と、締めてから、

 ウラスケに視線を送り、


「ぼくの見解だと、お前は危険分子ではない。充分な自制心を持った人間だと判断する。だから、できれば、神話狩りに加入してもらいたいと思っている」


「そら、ありがたい評価やけど、しかし、それは、そっちが繭村アスカの対処について考え直してからの話や」


「考え直すべきなのは、お前だ。お前は、現状が理解できていない。その女は、いつ爆発するか分からない核みたいなもの。そして、その被害規模は、『一つの都市に甚大な被害を与える』とか、『数万人が命を落とす』などという、常識の範囲に収まる代物じゃない。その女……ネオバグの中には、世界を終わらせることだって不可能ではない異常なエネルギーが秘められている」


「……しっかりとした厨二やなぁ。顔まっ赤になるわ」


「バカにするのは自由だが、現実は受け止めろ。今のお前は、世界にとって害悪でしかない。おれたちは、文字通り、命がけで、世界のために働いている。お前は、そんなおれたちの邪魔をしている障害。それだけが現実」


 虹宮の言葉を、ウラスケは、キチンと受け止めた。

 内容が理解できないとか、そもそも理解する気がないとか、

 そんな、ズレた逃避でお茶を濁したりはしない。


 ちゃんと飲み込んで、受け止めて、

 その上で、


(……それでも……イヤなもんはイヤなんじゃ、ぼけ……)


 ガキのワガママで迎えうつ。

 理屈や常識にとらわれない奔放なカルマ。

 幼稚さという、トリッキーな剣呑。


 そこで、ウラスケは、

 スっと、目を閉じて、


「……あんたって、めちゃめちゃ強いけど……」


 ぼそぼそと、


「あんたらの大将……確か『聖主』やったっけ? そいつは、あんたよりも遥かに強いんやったっけ?」


「ああ、比べ物にならない。なんせ、聖主は、大いなる邪神を狩った人類の救世主だから」


「邪神を狩った救世主……はぁ……まあ、その辺はようわからんけど……」


 とフワフワした前を置いてから、

 ウラスケは、


「それだけ強いんやったら、少女一人にビビる必要なんてないやろ。今後、繭村の監視はぼくがやる。で、仮にぼく一人で止められへんかったら、その時は、その聖主様がどうにかしたらええ……それだけの話とちゃうんか?」


「今、この瞬間に処理しておくのが、一番簡単で確実。聖主は、確かに、世界最強の神殺し。それは間違いない。しかし、そこのネオバグが、聖主を超える可能性はゼロじゃない。わかるか、その可能性は、決して荒唐無稽じゃないんだよ。もちろん、限りなくゼロに近いのは事実だが、しかし、ゼロではない以上、放置はあまりにも愚策」

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