ヘビィな物語。

ヘビィな物語。


「私が、コレを認知したキッカケは……両親の暴力。……私は……虐待されていたから」

「……ぉお……また、ずいぶんとヘビィな話になりそうやな」


 苦い顔をしているウラスケのトイメンで、

 アスカは、言葉を選ぶことなく、つらつらと、


「私の父と母は、イヤな事があると、私を殴った……意味がわからなかった。なんで、私を殴るんだろうって……私が悪い時もあったけど、それ以外の時でも……気分しだいで……私を殴った……首もしめられた……お風呂に沈められたり……タバコの火を押し付けられたり……」


 渋い顔で頭をかかえだしたウラスケが、

 そこで、待ったをかけて、


「ああ、えっとな……こっちから『詳細に話せ』と言うておきながら、ずいぶんと理不尽な話やとは思うんやけど……そこのところの具体性は、出来るだけ省いてくれるとありがたい。すまんな、ぼくは、そっち方面に耐性がないんや」


 ウラスケのヘタレ発言を受けると、

 アスカは、小さく頷いて、


「あの日……いつもより、強く、長く、首をしめられて……死ぬかもしれないと思って……そしたら、私の中から……アレが――ネオバグが、出てきて……」


「それで?」


「父と母を……バラバラにした。私の体を使って……迷いなく……嬉々として……ほんとうに……バラバラに……」


「……ずっとヘビィやな……聞いてられへん……」


 再度頭を抱えるウラスケに、アスカは、


「私は覚えている……ハッキリと間違いなく……『この手』が殺した……こう……手から刀みたいなのが出てきたのを覚えているの……その刀を力いっぱい振って……最初に父の首が飛んだ……それを見て怯えている母の顔……覚えている……妄想なんかじゃない……全部、ちゃんと、鮮明に覚えている……」


 死んだような目で、


「私は自首した……私の中にいる何かが、両親を殺したって……私はちゃんと正直に、一から十まで全部喋った……体から刀みたいなのが出てきて、両親をバラバラにした後は、私の体に戻ったって。凶器は私の中にあるから、解剖して取り出してほしいって、ちゃんと伝えた。……私は自分の罪を……全部全部全部、ちゃんと、警察に伝えた……けど、誰も信じない……全員が全員、一人残らず、私を被害者扱いした……全員が、私の事を、頭がおかしくなったとしか言わなかった……」


「やろうな……小学生女子の力で、大人二人をバラバラ死体にするなんて不可能やから、お前を疑う余地はない……強盗に殺された両親を見て『頭がバグった』としか思われんやろう。体から刀が出てきて、両親を殺したあとは体に戻ったってのも、常識人の視点ではキ〇ガイの戯言でしかないし」


「私の中のコレが――ネオバグが、また暴れたらと思ったら……恐くて……何度も、私は、私を殺そうとした……けど……」


「飛び降りた時みたいに、回復してしまう……と。なるほど……だいたい分かった。これは、相当な事案やな……解決の糸口は……」


 ブツブツと、ここまでにそろった情報を口に出しながら、状況を整理していく。


「一番の問題は、やはり、ぼくが勝てるかどうか……ネオバグとかいうバケモノが、実際のところ、どの程度の脅威なんか……その具体的な詳細……現状やと、情報が足りん……スカウターでもあれば楽なんやけど……」



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