トウシ×ソンキー。

トウシ×ソンキー。


「一度だけ、お前の強化パーツになってやる。誇るがいい。お前は、この俺に、その『ありえない決断』をさせるほどの可能性を示した。それは、他の誰にも成しえないこと。お前は不可能を可能にしてみせた」




「……」




「お前の最果てを魅せてみろ、タナカトウシ」


 言い終えたと同時、

 ソンキーの体が粒子になって、トウシの中へと浸透していった。


「……ぁっ」


 ソンキーと一つになって、神々しい輝きに包まれるトウシ。





「……ぁあ……あっ……溢れる……こぼれおちる……なんという質量……なんという膨大な……」






 ソンキーエンジンの馬力はエゲつなかった。

 全身の奥から湧き上がってくる力。

 細胞が加速しているよう。



「とめどない……とどめきれな……ぃ、いや、逃がさない……一つもこぼしてやらん……この全部を……ワシのものに……」



 その全てを抱え込んで、

 トウシは叫ぶ。






「究極超神化5!!」






 あまたの段階をすっ飛ばして、

 トウシは、最大級の出力に身を投じる。

 超神を超えた先、

 神の終着点、究極超神。

 そんな究極超神を、

 超えて、

 超えて、

 超えて、

 超えた姿!!



「探り合いはしない! 今のワシに可能な最強の力で、あんたをねじ伏せる!! いくぞ、アダム!! 殺してやる!!!」



「ソンキーと融合し、究極超神級の出力が可能になった――ただそれだけで超えられるほど、私は浅くない! 現実をナメるのもいい加減にしろ、クソガキィイ!!」



 トウシとアダムの闘いは、激化した。

 互いが、互いに、空間ごとねじ伏せようと、次元多断層の制圧を求める。


 トウシは、凶悪なオーラによってコーティングされた刃の流星群を降らせた。

 無限を想わせるオーラソードの嵐。


 バ火力と自律円舞力に特化したソードスコール・ノヴァ。


 アダムは、剣雨の隙間をくぐり抜けて、トウシとの距離をつめる。

 全てが一瞬の中で消費されていった。

 空間に魔法陣が描かれては熔けて、

 時空に塗られた色彩が、認知されるよりも速く、次々と移り変わっていく。


 最初は、アダムが有利を取っていた。


 当然。

 魂魄の融合など、力が拮抗している者同士で行っても、基本的には『総合力が弱体化』してしまう禁忌技。

 出力は多少上がるが、大抵の場合、戦闘技術のピントがズレて、融合前よりも弱くなってしまう。


 ソンキー単体なら、アダムと悪くない勝負が出来ただろうが、

 トウシと混ざったことで、ソンキーは濁ってしまった。


 偉大なる純神の一等星――その輝きを、ソンキーは失ってしまった。


 ゆえに、アダムの勝利は揺るがない。

 圧倒的強者として、的確にトウシのリソースを削いでいった。


 ――しかし、次第に、


(バカなっ……縮んでいる……圧倒的だった彼我の差が……異常な速度で詰め寄られている……こんなイカれた話が……)


 時間が、アダムの敵になった。

 トウシは、凶悪な速度でソンキーを学習していく。

 融合によって生じた歪みが修正されていく。


(あるのか……こんなことが……否、あっていいはずがない……っ)


 焦りから、ミスも生じるようになった。

 ミスといっても、悪手というほどではなく、

 最善手ではなくなったという程度。

 とがめを受けるほどではない――はずだった。

 しかし、その拙いミスが、呼吸のズレを産んだ。



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