特別に遊んでやろう。

特別に遊んでやろう。


(まあ、そうなると、ワシ禁止のイベントが多発するやろうけど、岡葉や虹宮たちもかなり強くなっとる。あいつらの頭と力があったら、どんな嫌がらせイベントがきても、全滅は回避できるやろう。必死に生き残って、絶対に9999階までたどりついたる。おそらく、9999階のエリアボスは、あの鬼畜な神様なんやろうけど……最上階にたどり着くまでは、まだかなりの時間が必要。その時間をフルに使って、神様を超える力を蓄えて――)


 などと考えていると、


「ほかの者では、もはや、貴様の遊び相手にはならない。というわけで……」


 そこで、アダムは、バキバキっと指を鳴らし、


「主上様の側仕えであるこの私が……特別に遊んでやろう」


 明確な臨戦態勢をとった彼女を見て、トウシは、一瞬で、ブワっと冷や汗を流し、


「……ぇ……え?! いやっ……え?!」


 慌てふためいているトウシに配慮などするはずもなく、

 アダムは、淡々と、


「言っておくが、私の強さは、ミシャンド/ラの遥か先を行っているぞ。存在値も戦闘力も、全てがケタ違い。伊達や酔狂で、主上様の従者を名乗ってはいない」


 自己紹介にふける彼女に対し、

 冷や汗に包まれているトウシは、声をつまらせながら、


「ぇ、ちょ、いや……ぇ、もしかして、今やる気?! ウソやろ?!」


「もちろん、今から闘う。何か不都合でも?」


「あるやろ、そら!! 目ぇ開いて、よぉ見ぃ! ひかえおろう、ワシの、このボロボロの姿が目に入らぬか! ミシャンド/ラとの闘いで、疲弊しきっとる今のワシが、ミシャンド/ラ以上のあんたと闘えるワケ――」


「それは貴様の都合だろう。なぜ、この私が、貴様ごときの体調や事情を慮(おもんぱか)る必要がある?」


 相も変わらず、傲慢でワガママで自己中心的な彼女の発言を受けて、


「……ぉえ……」


 トウシは吐き気を催し、

 クラクラして、

 ピヨピヨして、

 フラフラして――


「さあ、立て。殺し合いをするぞ」


「いや、マジで……ちょっと、待っ――」


 『トウシの言葉を聞く気など毛ほどもない』とも言わんばかりの勢いで、

 アダムはトウシの言葉をぶったぎるように、


「改めて、キチンと、正確に伝えておくが……私は強いぞ。主上様と比べれば、私などゴミだが、しかし、主上様以外が相手なら、私は、この世の誰にも負けん。主上様がいない世界になど、なんの価値もないゆえ、想像すらしたくないが……もし、仮に、主上様がいなければ、私という個は、全世界最強にして完全なる絶対無敵の存在。さあ、そんな私を……果たして、貴様ごときが超えられるかな?」


「そこまで強いなら、ワシが万全の状態になるまで待ってくれても――」


「御託はいい。立てと言っている」


「だから、今の消耗激しいワシでは――」


「なるほど。お疲れで立てないのか。ならば、立ちたくなるようにしてやる」


 そう言って、アダムは、人差指をジュリアに向けて、


「バン」


 弱いビームを飛ばした。

 特に魔法のコーティングがかかっている訳でも、

 オーラで強化されたワケでもない、

 ちょっとした、熱エネルギーの照射。


 アダムからすれば非常に弱々しい熱光線だが、ジュリアを殺すくらいは楽勝。

 そんな光を目の当たりにして、

 トウシは、


「くっ、くそがぁ!」


 自分の体にムチを打って立ち上がり、

 ギリギリのところで、熱光線(弱)からジュリアをかばう。


「ぐはぁああ!」


 背中に直撃。

 アダムからすれば蚊を潰す程度の照射だったが、

 トウシの肉体には後遺症ものの大ダメージが入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る