罪と罰。
罪と罰。
「お前じゃ、俺には絶対に勝てないから」
そう前を置いてから、虹宮(モンジン)は、続けて、
「全滅というのは、『頑張ればクリアできる条件』を達成出来なかった時に課す最大の罰だ。『絶対にクリアできないゲーム』で負けたからって全滅させるのはルール違反。俺は、どんな時でも、『俺のルール』を遵守する。難易度高めの設定にしてある自覚はあるが、理不尽な難易度にはしない。それだけの話」
「……なるほど。ほな、ワシが負けたら、ワシが死ぬだけにしてくれん? 調子こいたんはワシだけなんやし」
「お前は、50人の中には入らない。なぜなら、それこそが、お前に対する最大の罰になるからだ。神に対して『ナメた上等』をカマした代償を払ってもらう。ここで、心にキチンと刻め。俺をナメるな」
「……」
「無様に生き残れ。この地獄で、最後まで、あがき、もがき続けろ。『俺には絶対に勝てない』という苦悩を抱えながら、最後の最後まで、苦しみ続けろ」
「……ちょぉ、神様、そんなに怒らんでもよかですやん。さっきの挑発は、ちょっとしたアレですやん。本気にせんといてぇなぁ」
「死ぬ人間の数を70に増やす。もう、これ以上、俺を怒らせないほうがいいぞ。強制はしないがな」
「……」
「さあ、勝負の続きといこう」
「……くそったれが」
トウシは歯噛みしてから、スゥっと息を吸い、天を仰ぐ。
爆発しそうな心臓を精神力だけで抑え込む。
ドクンと跳ねては血流が乱れる。
(70人……)
頭の中で『数』がのしかかってくる。
心が砕け散りそうになる。
(ちょっと強引にじんろう吊りしたら怒るってなんやねん……そういうゲームをやってたんとちゃうんかい……なんの手がかりもない状態から『誰がじんろうかを探れ』ってなったら、多少のパワープレイはしゃーないやろ……くそったれが、どんだけワガママ放題やねん……)
頭の中が、神への文句で埋まる。
とめどなく溢れ出る。
(落ちつけ……愚痴は後でいい。今は考えろ……どうする……どうすれば、勝てる……絶対に負けられん闘い……ワシのミスで70人も殺すわけにはいかん……どうする……考えろ……思いつけ……)
先ほどの、虹宮のスイングを頭の中で思い出す。
無理に思い出そうとしなくとも、鮮烈だったので、脳の深部にこびりついている。
(おそろしく鋭いスイング。文句のつけようがない……まさに、神スイング……おまけに、死角のない、スタンダードな汎用スタイル……ど、どこに投げても……打たれる気ぃしかせぇへん)
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