神狼。

神狼。


「……もし、おれが、トウシくんと同じ力を持っていたとしても……おれには出来ないって思った……だから、凄いなって……ホントにカッコイイなって……」



「……」


「でも、それだけじゃダメだって思った……凄いなぁって憧れているだけじゃダメなんだよ。……今度は、おれが助けるんだ! まっすぐに! 前を向いて!」


「……」


「そのための力がいるんだ! 『助けてくれ』って叫びに応えられる力が! トウシくんの隣に立てる力が! おれじゃあ、トウシくんほどの凄いコトは絶対にできないけど! でも、バディとして、支えるくらいのことはしたいんだ! だから、おれは――」






「お前の真摯な想い、確かに聞き届けた。叶えよう。お前に力をやる」






「ほ……ほんとうに?」


「俺は嘘をつかない。ともに邪悪神モンジンをやっつけよう」


「うん!」


 そこで、ここではないどこかにいる『ココロの綺麗な神センエース』は、虹宮に人差指を向けて、


「よし、では、いくぞ。ドーン!!」


 不気味に笑っているセールスマンのように、闇の力を放った。

 すると、


「うぁあああああああ――」


 虹宮の意識がどんどん遠のいていった。


 そして、



「――憑依完了……くく……ちょっろ……。『嘘をつかない』なんていうやつが、嘘をつかない訳がないだろ、ばぁか」



 虹宮に憑依したセンエース(モンジン)は、


「さぁて、どいつを『もう一匹』にしようかなぁ……」



 舌舐めずりをして、周囲をうかがった。

 すると、そこに、


「あれ、虹宮くん、ここで、なにをしているの? トイレに行くんじゃなかった?」


 同じフレア隊の椿美代が通った。


 彼女の姿を確認した虹宮(モンジン)は、邪悪な笑顔を浮かべて、


「君に決めた♪」


 そうつぶやいて、虹宮は、椿に指を向けて、


「はい、ドーン!」


「え?! ぁ! な、なに――」


 あまりにも一瞬の出来事だった。

 何も分からないまま、椿の意識がフっと消えた。


 倒れそうになる椿を、虹宮は、ソっと支えて、パチンと指を鳴らす。


 すると、

 椿がパチっと目をさまし、

 虹宮に対し、スっと、片膝をついて、頭を垂れた。


「我が神……なんなりと御命令を」


「次の命令をするまで、椿美代としておかしくない行動をしておけ」


「おおせのままに」


 そう言うと、椿美代は、スタスタと講堂へと戻っていった。

 その背中を見届けてから、

 虹宮は、



「アダム、アナウンスを流せ。神狼(じんろう)ゲームをはじめる」



『かしこまりました』






 ★



 虹宮が講堂に戻ってくると同時、

 壇上にアダムが現れて、



「それでは、これから、二度目の課題を始める」



「二度目、はや……」

「このペースか……しんど……」

「次はなんだ? 物理か? 地理か?」




「二度目の課題は神狼ゲームだ」




「……また、ずいぶんな変化球がきたな、おい」

「じんろうか……」

「アレ、ぶっちゃけ、運ゲーだからなぁ……」

「確かに、定石知っている者同士でやると、勝敗は完全に運で決まるなぁ」

「てか、まず、ルール知らんやついる?」

「「「「「……」」」」」

「うわ、ゼロだし」

「100人近くいて、ルール知らない人一人もいないの? すごくない? ジャンケン級の浸透率じゃん」

「頭いいヤツは、絶対に人狼のルール知ってる説」


 などと、ゴチャゴチャ言っている彼・彼女達に、アダムは続けて、



「貴様らの中に二人、神狼が混じっている。見つけ出さなければ、全員死ぬ。以上だ。では、がんばれ」


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