一撃必殺の打開。

一撃必殺の打開。


 トウシとジュリアは、その卵の元まで駆け寄り、


「なんや、よう分からんけど……」


 言いながら、二人、それぞれ、卵にソっと触れた。

 すると、

 パキパキっと音がして、


「「きゅい!」」


 二匹の携帯ドラゴンが出現した。

 割れた破片は淡く光って、

 スマホ型のマジックアイテムへと変貌していく。


 一連の様子を見ていたジュリアが、



「これ……まさか、携帯ドラゴン……?」



 ボソっとそうつぶやくと、

 トウシも、


「たぶん、そうやろうなぁ……」



 などと、ボソっとそう呟いた直後、


 ドゴォ!


 と豪快な音がして、


 窓の外から、


『一分経過。さて、答えを聞こうか』


 ゴーレムが飛びこんできて、そう言った。


 二人の携帯ドラゴンは、『敵であるゴーレム』を視認すると同時、


「「きゅいっ!」」


 戦闘態勢になって、ゴーレムを睨みつける。


「やる気まんまんで頼もしい限りやけど……」


 そこで、トウシは、手の中に収まったMDデバイスをいじって、

 自分の携帯ドラゴンのステータスを確認する。




000000000000000000000000000000000000000


 登録名 『なし』

 型番  『IS=GPQC/タイプD95775‐GX9』


 《強化値》    【1%】

 《容量》     【200】


 [HP]     【1%】

 [MP]     【1%】


 「攻撃力」    【1%】

 「魔法攻撃力」  【1%】

 「防御力」    【1%】

 「魔法防御力」  【1%】

 「敏捷性」    【1%】

 「耐性値」    【2%】



 所有スキル、なし。


 111111111111111111111111111111111111111





「……初期状態やな……勝てるんか、コレ……いや、勝てんやろ、これ……」


 そこで、一通のメールが入る。



【ゲーム参加、ありがとうございます!】

「アホか、ぼけ! 誰も参加表明なんかしてへん! ムリヤリ、引きずり込まれただけや!」


【初ログインボーナスとして、ガチャ券を一枚さしあげます】

「渋っ! 初ログボで一枚?! そんなサービス悪いゲーム、誰もやらへんぞ」


【それでは、よいMDワールドライフを!】

「やかましわ!」


 魂の慟哭が終了したところで、

 トウシは、


「くそが! 頼む! エエのきてくれ! ハズレくんな!」


 神に祈りながら、


「裏技、発動してくれ! その上で、良質な当たりきてくれ! 頼む!」


 大きく息を吸って、



「ヒーロー見参!!」



 叫びながら、ガチャを回した。

 すると、

 『パンパカパーンッッ!!』と祝福の音がして、




「よっしゃぁあ! ☆Xきたぁああ! しかも、キャラパーツ!!」




 当たったのは『ソンキー・ウルギ・アース』というキャラで、


「――『ソンキー』? 誰やねん! 見た事ないぞ、こんなキャラ! まあええわ、とにかく、☆Xきたぁあ!」



 ガチャで当たる携帯ドラゴンの強化パーツは、

 『技パーツ』『外装パーツ』『称号パーツ』など複数種類あるが、

 その中で『最もユーザーに喜ばれる』のは、ダントツでキャラパーツ。


 ゲームの設定的には、

 ――『入手したキャラの遺伝子』を携帯ドラゴンに取り込む――というもので、

 そのキャラ固有の能力や技が使えるようになったりする。

 全部で五枚セットでき、その組み合わせてコンボボーナスが発生したりもする。



「セット、セット、セットォオ!」



 MDデバイスを使い、

 入手した『ソンキー・ウルギ・アース』のキャラパーツを、

 即座に、己の携帯ドラゴンにセットするトウシ。


 その瞬間、

 携帯ドラゴンの形状が変化していく。

 キュイィインと耳に心地よい音が響いて、

 その直後、『ソンキー』というキャラクターの特徴が少しだけ出ている携帯ドラゴンが誕生した。

 とんでもなく神々しい姿をした、超イケメンの携帯ドラゴン。


「きゅい!」


 超パワーアップした事を喜ぶ携帯ドラゴン。

 ソンキーのキャラパーツをセットした事による結果はこちら。




000000000000000000000000000000000000000


 登録名 『なし』

 型番  『IS=GPQC/タイプD95775‐GX9』


 《強化値》    【701%】

 《容量》     【60200】


 [HP]     【1501%】

 [MP]     【1501%】


 「攻撃力」    【5001%】

 「魔法攻撃力」  【1001%】

 「防御力」    【1001%】

 「魔法防御力」  【1001%】

 「敏捷性」    【1001%】

 「耐性値」    【1002%】



 所有スキル、多数。


 111111111111111111111111111111111111111



 強大な力を得た携帯ドラゴンは、

 ギラっと目を光らせ、


「きゅい!」


 ゴーレムめがけて突進した。

 尋常ではない速度から産まれる強大なエネルギー。



『ぐぼおぉおお!』



 貫通し、腹部に穴があいてしまったゴーレム。


 たったの一撃で、


『ぐぅ……私が……こんなカスどもに……』


 力なくズシンと膝をつき、そのまま機能停止状態になった。




 ★



 ゴーレムがあっさりとやられた所を見たセンは、


「そ……ソンキーをあてやがった……マジか……」


 ワナワナと震えていた。


「信じられねぇ……このタイミングで、ソンキーをひくかね……ソンキーは、シークレット中のシークレット……確率で言えば、0・00002%とかだぞ……そのぐらいの確率にしないと設定できないほどの力をもった究極レアパーツ……なのに……」



 『スタードダッシュ応援特別キャンペーン・舞い散る閃光ガチャ』の超目玉が、ソンキーのキャラパーツ。

 『元最強の究極超神』がモチーフとなっているアルテマキャラパーツ。

 アホみたいに確率が絞られていて、当てさせる気が微塵もない超々々特別仕様のシークレットレア(そういうアリア・ギアスを積まないと、これほどの力は付与できなかった)。


 それゆえ、破格の性能を持っており、

 ゴーレム程度では相手になる訳もなし。


「つうか、トウシの野郎……ガチャをひくとき、『ヒーロー見参』って……なんで、そんなセリフを……」


 いぶかしげな目でトウシを見つめるセン。


「ぶっちゃけ、よくわかんねぇが……どうやら、想定していたよりも、ずっと楽しい展開になりそうだな……」


 ニっと笑い、


「さて、チュートリアルも終わった事だし……本格的にゲームを開始しようか」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る