テスト。

テスト。



「――ラムドアイズは、間違いなく最強のラムドカード。別格の切札。まあ、とはいえ、スリーピース・カースソルジャーよりは弱いけど。……『スリーピース・カースソルジャー、どんだけ強いんだよ』って感じだよな。『ラムドアイズ』と『カースソルジャー』も、見たいっていうなら見せてやってもいいぜ。どうする?」


「……いい」


「あん? 聞こえねぇ」


「もういい……服従する……」


「口の利き方がなっていない。死にたくないなら、タメ口きくな。俺はお前の同僚でも友人でもない。立場をわきまえろ」


 叱られたガイリューは、一度、グっと強く奥歯をかみしめてから、

 両目を閉じて、力を抜き、


「……俺は……これから……どうなる……のですか?」


 力なく、そう尋ねてきたガイリューに、

 ラムドは言う。


「これから、世界はまとまっていく。お前は、そのための歯車になる。お前だけじゃなく、俺も含めた全員がな」


 と、ラムドがそう言った時、






「……素晴らしい……」






 この空間の隅に、突如、スゥっと、細身のダークエルフが出現した。


 そのダークエルフは、恭しく頭を下げて、


「お初にお目にかかります。ラムド様。わたくし、妖精の都で代表をしております。ショデヒと申します」


 急に現れたその『招かれざる客』に対し、

 ラムドは、特に感情を見せず、

 たんたんと、


「……ん、で?」


 そう尋ねると、

 ショデヒは、ニっと微笑み、


「あまり驚かれてはいない御様子。もしや、私が隠れていた事に気付かれておいでで?」


「ああ。最初からな」


 その発言を受けて、

 ショデヒは、大げさに、


「な、なんとっ! ……流石でございます、ラムド様!」


 驚いてみせてから、しゅくしゅくと、


「まさか、屋根裏に隠れていた時から発見されていたとは……」


 と、そう言ったところで、

 ラムドは、面倒臭そうに溜息をついて、




「俺を試すな、鬱陶しい」




 ――そこで、はじめて、


「……っ」


 ショデヒは『本当に驚いた顔』をしてみせた。

 そんなショデヒに、ラムドは言う。


「俺は、『お前が今朝からずっと、俺を監視していた事に気付いていた』と言ったんだ。お前の子分が周囲に五人ほど隠れているのも知っている。他にもいくつか知っている事はあるが、全部言っていくか?」


 少し強めのオーラで威圧するラムド。

 そんなシッカリめの圧力を受けたショデヒは、


「……ラムド様……あなた様は今……私が『あなた様を試すかどうか』を……試されましたね」


 額に重たい汗を浮かべてそうつぶやくショデヒに、

 ラムドは、あっけらかんとした顔で、


「だったら?」


 そう尋ねると、

 ショデヒは、ニコっと微笑んで、


「完璧でございます。私の上に立つ御方に相応しい」


「あ、そ。で? そろそろ本題に入れ」


「私は、妖精の都を、完全に掌握しております。私の決断が、妖精の都の総意だとご理解いただきたく」


「知っている。で?」


 そこで、ショデヒは、スっと片膝をついて、


「わたくしを、ラムド様の配下の一人に加えていただきたく存じます」


 頭を下げてそう言ったショデヒに、ゴートは、まるで、最初から決めていたかのように、


「条件がある」


 そう言うと、ショデヒは、待っていましたとばかりに、


「なんなりと」


 と即答する。


「鬼の里を、限りなく無傷に近い状態で魔王国の下につけてこい。補佐としてガイリューを連れていく事を許可する」


 その命令に対し、


「かしこまりました」


 自信満々の笑みで即答し、


「すぐにカタをつけてまいります」


 そう言うと、ショデヒはスっと立ち上がり、


「さあ、いきますよ、ガイリュー」


 言われて、ガイリューは、


「……ぁあ」


 力なくそう返事をして、ショデヒの後ろについていった。

 もはや、色々と諦めた顔をしていたガイリュー。


 時代の変化に戸惑いを覚えながらも、

 しかし、どこかで、ガイリューは、

 『面白くなりそうだ』とも感じていた。


 どう変わっていくのか、まだ分からないが、しかし、

 『ラムドを中心に変わっていく世界で踊るのも楽しいかもしれない』と、

 そんな事を思ったガイリューだった。



 ★



 ――ショデヒとガイリューの二人が鬼の里に向かった、

 と、ちょうどその時、



「テプ0時を過ぎたよぉ」



 また、チートタイムが訪れる。





【後書き】

この章、序盤は、少しゆっくりでしたが、ここから怒涛!

……の予定!

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