中枢を探しながら。

中枢を探しながら。


 弱っているAは、元気いっぱいのCにほとんど抵抗できず、あっさりペロリといただかれてしまった。

 すると、Cの目がギンっと、一瞬、強く光った。


 Cのマスターは、手の中にあるスマホ型マジックアイテム『MDデバイス』をススっと操作して、ステータスを確認する。




000000000000000000000000000000000000000


 登録名 『シー』

 型番  『IS=GPQC/タイプD95775‐GX9』


 《強化値》    【2%】

 《容量》     【210】


 [HP]     【1%】

 [MP]     【2%】


 「攻撃力」    【3%】

 「魔法攻撃力」  【1%】

 「防御力」    【1%】

 「魔法防御力」  【2%】

 「敏捷性」    【2%】

 「耐性値」    【1%】



 111111111111111111111111111111111111111


 

(……ほとんど強化されていない……まったく強化されていない携帯ドラゴンを食べさせても、あまり意味はなさそうだな……)


 などと、情報を精査していると、


「く、くそ……失格かよ……せめて、三次までは残りたかっ――」


 食べられてしまったAのマスターの姿が、スゥっと消えていった。


 その後、アナウンスが流れる。




『59番(Aのマスター)。失格。強制送還終了。来年の挑戦をお待ちしております』




 それを聞いて、周囲の者達は、


((((((なるほど、携帯ドラゴンを失うと、元の場所に戻る仕様か……))))))


 と、二次試験についての理解を深めた。

 転移系や空間系の特殊ギミックは珍しい仕掛けだが、フーマー主催の冒険者試験でならば『ありえなくはない』という基本的な社会常識があるため、誰も、現状に動揺したりはしなかった。


 そんな彼らの一連の様子を、センとアダムとシューリの三人は、少し離れた場所の屋根の上から眺めていた。


 ふいに、シューリが、


「さて、どうしまちゅか? この『携帯ドラゴンとやら』の力しか使えないとなれば、初期状態のままだと、オイちゃんたちでも負ける可能性がありまちゅよ」


「いや、それはない。攻撃はできないみたいだが、移動なら、普通にできるみたいだからな……最悪、瞬間移動で逃げればいい。不意打ちの瞬殺さえ受けなければ、どうということはない」


「闘っている間は、逃走不可とかいうルールはないんでちゅかね?」


「さっきの二人の闘いを観察してみたが、どうやらその手の縛りは発生していないようだった。あくまでも、『直接攻撃禁止』。それだけ」


「けっこう緩いルールでちゅね。『攻撃できない』ってだけだったら、ある程度の力差があれば、まあまあどうとでもなるんじゃないでちゅか?」


「運で実力者を落としたくないのかもな。一次試験も、運とは言っていたが、実際のところは、才能を測っていた。……委員会は、まじめに冒険者試験をやっている。強い者を選別する試験を……」


「で、どうするんでちゅか?」


「まあ、せっかくだしな……少しだけ、普通に楽しんでみるのも悪くはない……もちろん、同時進行で、中枢を探すが」


 と、そこで、アダムが、


「中枢……とは、いったい、なんのことですか?」


「このゲームの『ルール』を支配している連中がいる場所……って感じかな。そこを制圧して、俺にとって都合のいいルールにかえさせる」


「ぉお……な、なんと……それほどまで大胆な攻略法をお考えだったのですか……」


「いや、予選でもやったじゃないでちゅか。同じ事をするだけでちゅよ」


 予選で、センは、ゼンに対して『試験官ごっこ』をした。

 もし、あれが禁止行為であり、『正規のルートではない』という判断を受けるのであれば、既にセンの冒険者試験は終わっている。


 正直、『正規のルートではない』と判断される可能性はある。

 ぶっちゃけ、今のところは、まだ分からない。

 『冒険の書』を手に入れて、禁域にある扉にブチこむまでは判定しようがない。


 ただ、仮に、『予選での行為』が禁止行為ではないなら、

 ここで、同じ事をしても、当然、イチャモンはつけられる心配はない。


 仮に、『根底を覆す』というのが『禁止行為』なら、予選ですでに違反をしてしまっており、つまりは、『すでに落ちている』という事になるので、ここからどれだけ禁止行為をしようが同じということ。

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