学内ランキング2位『エリク』の悲鳴。

学内ランキング2位『エリク』の悲鳴。


「逃げ足だ……人間の足音。おそらく、先に行った連中が引き返している音……かなり慌てている。めちゃくちゃ必死で逃げてやがる……」


 渋い顔でそう言ったドコス。

 そこで、エーパが、


「ねえ、お嬢……今日、参加している人の中には……確か、エリクさんもいたわよね」


 その問いに、カルシィが答える。


「ああ」


 カルシィは、渋い顔になって、


「ドコス……『エリク』も、その逃走グループに入っているか?」


 エリクは、学内順位2位の実力者。

 戦闘特化でおそろしく強い。

 汎用型の魔法使いタイプで、広域殲滅も一点集中も得意という万能魔法使い。

 存在値30級のモンスターが群れで現れても瞬殺できる超人。


「……ああ。あいつの足音は特徴的だから間違えない。あいつも逃げてきている。というか、近い」



 と、そこで、森の向こうから、



「ひぃいい!」



 真っ青な顔で悲鳴をあげながら、こちらまで駆け抜けてくる青年の姿が見えた。

 青いローブを纏っている高身長の男。


 そんな彼の姿を目視したカルシィは、


「エリク! どうした? 何があった!」


「に、逃げろ、逃げろ! 死ぬぞぉ!」


「なにがあったかと聞いている!」


「古龍が出やがった! 勝てるか、あんなもん!」


 そう叫び、ダダダァっと走り去っていくエリク。


「カルシィ、逃げるぞ!」

「お嬢! 逃げるわよ!」


 カルシィの命が最優先の二人が、カルシィにそう叫んだ。


「そうだな。流石に古龍は相手にできない。すぐに逃げ――」


 逃走する決断を下した、ちょうと、その時、






「――他は逃がしても、貴様は逃がさない――」






 上から、気品がある龍が降ってきて、そう言った。

 サイズ的には『二階建ての一軒家くらい』で、超巨大サイズという程でもないが、その気品とオーラは半端なかった。


 カルシィは、一度、フーマーの海域を守護している『エンシェント・リバイアサン』をその目で見た事があるが、目の前の古龍からは、それ以上の圧力を感じた。


 古龍は、カルシィを睨みつけ、


「――そこの娘……貴様、『東方』の『深き血』を継いでいるな――」


「……」


「――目覚めの食事に相応しい。貴様を殺し、その魂魄を奪わせてもらう――」


 ヨダレを垂らしながらそう言うと、全身の魔力を高めた。


 強大な魔力にあてられて、

 カルシィは、


「っ! ……剣気ランク5!!」


 反射的に、戦闘態勢をとった。

 全身のオーラを膨らませ、必死になって、古龍の覇気に耐える。


「――人の身で、龍種のエンシェントである我に勝てると思うか――」


 古龍はそう言うと、翼を広げて、フワっと飛びあがり、

 グンっと体重を乗せ、カルシィめがけて急降下してきた。

 まるで、ライダーキック。

 左足にオーラを込めて空から突撃。


 凄まじい速度と圧力。

 ギリギリのところで回避するカルシィ。

 だが、風圧で体勢を崩され、そこに、長いシッポが、ムチのように、


「がぁあ!」


 バシィンっとカルシィの全身を打ちつける。


 大量の血を吐くカルシィ。

 鮮血が舞って、骨が砕ける。


「カルシィ!」


 ドコスが叫び、その後ろで、エーパが真っ青な顔で気絶寸前の顔をしている。


 一瞬、頭が真っ白になりかけた二人。

 すぐに自分を取り戻し、カルシィの救出に向かおうとするが、

 それを、


「くるなぁ!」


 カルシィは大声で制する。

 カルシィの命令でピタっと立ち止まる二人。


 そんな二人に、カルシィは、


「私の獲物だ……邪魔するな……」


 フラつきながら、立ち上がって、


「お前たち、全員、この場から消えろ。こいつを狩るのは私の特権。誰にも譲らない」


 スゥっと息を吸って、


「何をしている! さっさと消えろ!」



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