――舞い散る閃光――

――舞い散る閃光――


「圧倒している! センエースを! 俺がぁあああ!」


 膨れ上がっていく強さ。

 果てなく、

 際限なく、

 P型センエース1号は強くなり続ける。



「最強の神を! 俺が追い詰めている!」



 P型センエース1号は、必死に自分を肯定していく。

 『自己満足』を『達成』させようと、歓喜を表現しようと必死。


「俺は超えた! 辿り着いた! 俺は最強になった!」



「そうだな……お前は俺を超えた。辿り着いた」



「なら、ほめたたえろぉお! 『俺がセンエースを超えた』という『この事実』を、つまんねぇ虚無で包むんじゃねぇえええ!」


 P1の表情は、先ほどからずっと、まったくもって『歓喜の顔』ではなかった。

 今のP型センエース1号は、『喜び』など、わずかも抱いていないのだから当然。


 最強に達して、最強に認められて、

 それでも、心にあるのは『燻(くすぶ)った怒り』と『消えない焦り』だけ。


「俺は……俺は、お前を――」


 言葉がうまく出てこない。

 タイムリミットが迫っている。

 その、焦りとも少し違う、妙に重たい動悸だけが心を支配している。

 水の中にいるみたい。

 ただ、ドクドクと、意味のない拍動だけが耳を震わせる。


 ――そんなP型センエース1号に、


「なあ、P型」


 センエースは声をかける。


「……あぁあ?!」


 耳と目を傾けてくるP型センエース1号に、

 センは言う。






「五分だけとはいえ、俺より強くなってくれて、ありがとう」






「……っ?」


「おかげで、辿りつけた。今まで、どうしても届かなかった世界。超えきれなかった壁……『真』にとどまっていた停滞……」


「……停滞だと……? なにを、バカなことを……お前は、限界を超えた世界に――」


「俺より強いお前と闘ったことで、足りなかった最後の最後のピースが埋まった」


「……ど、どういう……」


「お前は、俺の宝物(ゼノリカ)を傷つけた。お前は俺の敵。俺は、組織の長として、お前にケジメをつけさせなければいけない。そうでなければ、ゼノリカの輝きに影がともってしまう。ゼノリカに消えない歪みが残ってしまう。そんなことは許さない」


「……」


「俺は王として、お前に勝たなければいけない。絶対に負ける訳にはいかない。そんな敵が、俺より強くなった。五分間だけとはいえ確かに、間違いなく。……おかげで、俺は……もう一歩、踏み込んで、ガムシャラになれた……」


 ふいに、センの周囲で、

 センを包み込むように、

 奇怪なアストラル神字が舞いだした。



「ま、まて……なんだ……どうなっている……なんだ、その、わずかも理解できない、異質な光は……」



「ここまで、俺は、一度たりとも弛(たゆ)まなかった。全部を賭して、それでも足りなかったもの……それを、お前は埋めてくれた……」


 重ねてきた軌跡が、

 相互に補完しあって、


「想像できるか? 俺の怒り……大事な家族を、ボコボコにされた恨み……」


 一致していく。

 運命が調律される。


 ――暴君は謳う。


「お前という害意に気づけなかったという情けなさ! いつまでたっても拭いきれない己の弱さ! 全部、のみこんで! 俺は、もう一歩、高く飛ぶ!」


 なにもかもが、一つになって、

 つまらない限界を超えていく。


「俺が積んできた全部と!」


 ついに、実現する、究極の調和。


「背負ってきた想いのすべてを!」


 そして!


「集めて!!」


 だから!!!


           |

           :

         〈* *〉

        [*****]

    [* * * * * * *」

「――/\**【【究極超神化7】】**/\――」

    [* * * * * * *]

        [*****]

         〈* *〉

           :

           |



 宣言により解放された神気は、

 あまりにも高次にありすぎて、

 形を失ったかのように思えた。


 けれど、象(かたち)は、間違いなく、そこにある。

 果てしなく瀟洒壮麗(しょうしゃそうれい)で、

 どこまでも豪華絢爛(ごうかけんらん)な、

 認知陰陽の森羅万象を包み込む輝き。


 静寂の中、尊い輝きに包まれているセン。

 背負っているのは、アストラル神字が浮かぶ後光輪。

 黒銀の結晶がちりばめられた、絶烈な究極超神気。

 荘厳な煌めきを圧縮させたような、どこまでも静かなオーラ。



すべての限界をブチ斬って、

 いと美しく、舞い散る閃光。



 ――そんな破格の神々しさに、



「ぁ……」



 P1は、モブのような嘆息をもらした。

 P1の存在感が、ハッキリとうすれた。

 P1の視界が、弧状の極光に包まれる。


 全てを超越した神が、

 さらに、大きな壁を超えた姿。

 留まる事を知らない、絶対神の後光。



 強大だった。

 巨大だった。



 何がなんだか分からない。

 ――そういう、遠い次元。


 影すら見えない、

 遠い、遠い、遠い、そんなドコか。


 そんな、『センエース』を見たP1は、


「……は……」


 スっと、肩の荷が下りたような顔になって、


「……はは……」


 おだやかに、柔らかく笑った。




【後書き】


 せ、セリフが……左右にオプションを背負っている……だと……っっ

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