俺を相手にする時は、

俺を相手にする時は、


「俺の推測だと、おそらく、あと、2000回ほど俺に殺されれば、お前は、今の俺の領域まで辿りつける」


「……」


「そこまで持つか? 持たないだろ? これも推測だが、おそらく、お前は、あと7回ほど死ねば枯渇する」


「……」


「おそらく、お前は、データ・数値だけを見て、俺との戦闘予測をたてたんだろ? 『センエースは、この数値』だから『これだけやれば勝てる』という机上の空論だけを頼りにして、今、お前は俺の前に立っている。違うか?」


「……」


「お前に一つ、大事な教訓を与えてやろう」


 そこで、センエースは、コホンとセキをして、




「俺を相手にする時は、何も想定するな。無駄だから」




「……」


「さて、それじゃあ、続きといこうか。ぶっちゃけ、俺の推測が外れていて、お前が俺を超えてしまうという可能性もない事はないんだが……まあ、それならそれでも別にいい。結果は変わらない。俺より強い程度のザコに、俺は負けないから」


「……」




「おいおい、どうした? さっきから、ずいぶん無口になったな。それにしても、これじゃあちっとも面白くない。もっと本気でやってほしいな。それとも、本気でやってこのザマだったかな?」




 無敵のセリフを並べてから、センは続けて、


「別に、恐い先生の授業中ってワケじゃないんだから、楽しくお喋りしたっていいんだぜ? どころか、奇声をあげて暴れまわる事だって許してやるさ。俺は心が広いんだ。というわけで、そろそろかかってこいよ。授業の締めとして、ここからは、終わり方を教えてやる」


 そこで、

 P型センエース1号は、


「……は、はは……」


 乾いた笑い声をあげてから、目に見えて脱力し、


「に……2000回か……そうか……さ、最初から絶対に無理だったのか……」


 そうつぶやくと、



「こ、超えられると……思った……頑張れば、諦めなければ……けど……ぜんぶ……勘違いでしか……なかった……」



 力なく、

 うなだれながら、

 そう言った。


 ――そして、

 だから、


「結局……」


 死んだような目になって、

 ボソっと、


「やるしか……ねぇのか……ちくしょう」


「あん?」


 センの疑問をシカトして、

 P1は、スゥっと息をすった。

 深呼吸。

 フラットで、一本調子で、

 とんと感情の見えない、

 そんな声音で、


「コスモゾーンよ、『無限転生・改』を含めた、俺の全てを捧げる」


 どこまでも無感情のまま、




「だから、五分間……俺を解放しろ」




 たんたんとそうつぶやいた瞬間、P1の体が赤いオーラに包まれる。

 それを見たセンは、


「そんな事務的に絶死のアリア・ギアスを積む奴は初めて見たぜ」


 そんなセンの感想を受けて、

 P型センエース1号は、

 湧き上がる力に、わずかも興奮を覚えている様子はなく、

 ただただフラットなまま、



「……最初から、この予定だったからな。事務的にもなるさ」



 ボソっと、力なくそう呟いた。


 センは、


「ふぅん」


 と、穏やかに、そう言いながら、


「ぶっちゃけ、五分だったら、『防御を固める』か『逃げ回るだけ』でも完封できる。そのどちらかがベストな処理方法だと理解している。けど……」


 センは構える。

 そして、P型センエース1号とは違い、熱のこもった声で言う。


「真っ向から相手をしてやる。その理由が分かるか?」


「……知らん……」


「ブチギレてるからだよ……もう少し冷静でいられると思っていた……冷静でいようと努めてきた……お前という敵が『想定していたよりもカス』だったから、どうにか、ここまでは冷静でいられた……けど、こうなった以上、我慢はできない……よくも俺の家族を傷つけやがったな……」


「我慢しようがしまいが無意味だ……お前じゃ俺は殺せない……」


「さあ、どうかな」


「わかるさ。究極超神化6では、俺は超えられない」


「なら、その先をいってやるさ」


「……は?」


「いつまでも、同じ場所で足踏みはしない。見せてやるよ。俺がたどり着いた、次の世界を……」


 そこで、センは、目を閉じて、

 グっと全身に力を込め、

 静かに息を吐き切ってから、

 カっと目を開き、








「――/\**【真・究極超神化6】**\/――」








 オーラを解放する。

 センの覇気は、限界を超えて、嵐のように、膨れ上がった。

 光の粒が暴風になって世界に散布される。


 壁を超えた先の次元をお披露目。

 カンストの向こう側を見せつける。


 ――その輝きは、留まることを忘れた波となって空間を覆い尽くす。


 それを見たP1は、ボソっと、


「そ、それがカンストを超えた姿……お前の……真の本気か? はは……なるほど……とっくに、限界を超えていたか……本当に、お前は凄まじい……確かに、素の力でお前を殺そうとすれば……最低でも、2000回は死ぬ必要があるな……」


 P1の視線の先で、まだなお、センのオーラは膨らみ続けていた。



 解放されたセンを見ていた誰かが言う。

 ゼノリカの誰かが、ボソっと、


「……あぁ……なんと……っ」


 感嘆符をこぼす事しか出来ない。

 装飾された言葉なんて出てこない。

 あまりに荘厳すぎて、ただ圧倒される。

 心が痺れていた。


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