子と親。

子と親。


 そんな面々の視線の先、

 ――くの字に曲がったジャミの頭を掴んで、P1は言う。


「まだだ、ジャミ……まだ、俺は、お前という天才を学習し切れていない。もっとハシャいで、俺を磨け」


「……くっ……離せ……私に、触るな……」


「おいおい、神に触れられていながら喜びもしないとは……まったく、それでも、ゼノリカに属する者か? 嘆かわしいぞ、ジャミ」


「き、貴様の強さは認めてやる……だが、ゼノリカに属する者は、誰一人として、貴様を神だとは認めない!」


「そうか、悲しいな。……まあ、ウソだけどな。悲しい訳がない。正直、どうでもいい。お前らの感情なんか知らん。どうであれ、なんであれ、お前らは、バカみたいに『センエースの夢』を見続ける。俺は『その部分』を奪うだけだ。ちなみに、それと直結する話なんだが、なんで、お前ら、全員が、普通に生かされていると思う?」



「……」



 ジャミは、シカトしたのではない。

 本当に、意味が分からずに沈黙してしまった。


 黙りこんだジャミに、P1は言う。


「俺は、最終的にセンエースを奪い、本物のセンエースになる。その時、お前らは自動的に俺の『子』になる。ようするに、お前らは、俺の存在値の一部になるってワケだ。じゃあ、殺す訳にはいかないよなぁ」


 その話を聞いて、ジャミは、虫酸が走るのを感じた。

 心の底から不愉快でたまらない。

 だから言う。


「貴様の……『子』になど……」


「なってたまるかって? 俺だってお前らの『親』になんかなりたくねぇよ」


 渋い顔で、そう吐き捨てて、


「まさか、俺が『お前らの親になりたがっている』とでも思ったか? バカが。ありえねぇ。メリットがなけりゃ、絶対にごめんこうむる。俺は、ただ、お前らを利用するだけだ。お前らの強さの一部を奪い、俺はより高みにいる俺を目指す。それだけ。――さて、無意味極まりないおしゃべりはここまで。さっさとかかってこい。『この程度の戦闘力』じゃあ、まだまだ話にならないんだ」


 そう言って、P1は、

 その手に掴んでいるジャミの頭部を、地面に向かって投げつけた。


 ドガンと豪快な音と土煙をたてるインパクト。

 凡人なら当然死ぬが、回復チートを持つジャミは、そのダメージをそっこうで0にして、すぐに体勢を立て直し、剣を構えた。


 そこまではスムーズだった。

 形を整えるまでは。

 ――しかし、


「……ぐっ……」


 そこから先を逡巡する。

 次の一手が思いつかない。


 キチンと断っておくが、ジャミは、決して、P型センエース1号に恐れてをなしているわけではない。

 ジャミ・ラストローズ・B・アトラーは、ここでビビって動けなくなるような男ではない。


 つまりは、単純に、


(どうすればいい……どうすれば、あいつを殺せる……無限に蘇生するというのは絶対にありえない。必ず限りはあるはずだ……しかし……)


 ジャミの『アンリミテッド・ヴェホマ・ワークス』は、ガチで無限に回復できるという鬼チートだが、死ねば終わる。

 そして、蘇生と回復では、必要となるリソースのケタが違う。


(枯渇するまで殺しつくせば、倒せるはず……だが、すでに、やつの力は、私と同等レベルにまでなってしまった……ここからは、一回殺すだけでも、相当な労力を必要とする……このままだと、枯渇させる前に、こちらが枯渇してしまう……い、いったい、どうすれば……)


 その時、ジャミは、ふと、

 聖典に記されていた『神』VS『バグ1万体』の神話を思い出した。


(……神帝陛下も……こんな気持ちだったのだろうか……)



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