バロール、手ぇ貸して!

バロール、手ぇ貸して!


(流石に、回避タンク特化だけあって、殺し切るのがなかなかダルい……ここからは、時間をかけて詰めるだけの『作業』になる。作業は意味ねぇ……いい加減、オカワリを呼んでくれねぇと、無駄に時間を消費する事になっちまう……)


 内心では、少しだけ焦っているP1。

 イラっとしながら、


(九華の第九席レミングウェイ・カティ。……アホじゃねぇんだから、もう、理解できているだろ。俺は、お前一人でどうにかなる災害じゃねぇ。さっさと、オカワリを呼びやがれ)



 などと心の呟いているP1を見て、冷や汗を流しているカティは、



「くそっ……」



 一度、苦々しげに言葉を吐き捨ててから、

 通信魔法を使い、



「バロール! このバケモノ、バカみたいに強い! 手ぇ、貸して!」



 救援要請を出した。

 プライドのせいで、なかなか切りだせなかったが、

 アホではないので、プライドに押しつぶされはしない。

 妥協しなければいけない所では、ちゃんと一歩引く。


(……この程度のカスも、一人で殺せないのか、私は……くっ)


 自分の弱さに辟易し、ギリっと奥歯をかみしめるカティ。



 ――救援は、秒速で登場する。

 本当に、助けを求めてすぐだった。


 完全武装状態のバロールが瞬間移動で現れて、

 P1を睨みつけ、


「……アレか? ただのガキに見えるが……どういうビルドだ?」


「異常な自動蘇生スキルが使える。既に何度も殺されていながら、その性能は一向に落ちる気配を見せない……どころか、ますます性能が上がっているように見受けられる。その上、死んで蘇るたびに強くなっている」


「ほぉ……タルいな。……で、あのガキの目的は?」


「知らん。聞いてない」


「……となると、今回の案件は、事情聴取と、徹底除菌の二項目だな。――ミッション了解」


 そこで、バロールは、両手に握りしめている剣を構えながら、


「おい、ガキ。なんで暴れている? つぅか、誰だ、お前」


 その問いかけに対し、P型センエース1号は、

 面倒臭そうに、ポリポリと頭をかきながら、


「……オカワリのたびに、いちいち自己紹介するのは面倒だな……んー、どうすっか……んー、いや、まあいいか」


 ボソっとそう言ってから、クっと顎をあげて、バロールを睨みつけ、


「繰り返すことで、『俺』が『俺であること』をさらに強く自覚できるようになる……ような気もしないではないしな」


 などと、意味の分からない事を述べてから、



「俺はP型センエース1号。お前らゼノリカを終わらせる者だ」



「……センエース?」


 バロールのこめかみに、分かりやすく『怒りマーク』が出現した。

 なんとかイラつきをおさえて、事情聴取を続行する。


「その名前、どういうつもりで名乗っている? 本名だと言うのなら、まあ、改名させるだけで許すが、もし、我々に『その尊き名を名乗る意味』を理解した上で騙っているのなら……タダではすまさないぞ」


「騙る?」


 今度は、P1のこめかみに、分かりやすく『怒りマーク』が出現した。

 イラつきを抑えて、言葉を並べる。


「ふざけんな。俺はP型センエース1号。本物のセンエースになる男だ。それ以外の何物でもねぇ」


「……一から十まで、さっぱり意味がわからんが……まあいい。というか、もういい」


 面倒臭そうに、溜息をつきながら、ゆっくりと首を振って、


「ゼノリカに仇なしている時点で、どっちみち死刑は確定。死刑囚の戯言にふりまわされるなど無様極まる。事情聴取は終わり。さっさと殺して終わらせる事にしよう」

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