究極の富国強兵。
究極の富国強兵。
ワイルの全身が恐怖に支配される。
心が砕け散りそうになる。
いっそ、壊れてしまえば楽になれるのに、なんて考えてしまうほどの恐怖。
「―――――――」
ついに、悲鳴は言葉にもならなくなった。
本能が悲鳴をあげていた。
生命としての格の違いに、魂が戦慄した。
涙とションベンを垂れ流し、ただただガクガクと震えているワイル。
そんなワイルに、ラムドは言う。
「これが本当に最後の警告だ。もう二度と慈悲は見せない。わかったか、ワイル」
「……わ……」
ワイルは、震えながら、
「…………我が王……これまでの非礼」
片膝をついて、
「……どうか……お許しを……」
必死に頭(こうべ)をたれるワイル。
そんなワイルに、ゴートは淡々と、
「王はリーンだ。俺の上に、リーンがいる。それがこの国の在り方だ。分かったか」
「……はっ」
深く、深く、深く、
頭を下げて、そう言ったワイル。
そんなワイルから視線を外し、
ゴートは、ダオのことを、少しだけ強く睨みつける。
「ひっ」
と、小さな悲鳴が聞こえた。
二秒ほど間を取ってから、ゴートは言う。
「さて、ダオ。まだ、俺に対して何か聞きたい事や意見具申はあるか?」
「……ぇ……ぁ……ぃや……」
プルプルと震えながら、
「な、なにもございません」
「当たり前だ、バカ野郎」
一睨みでコトを終わらせるゴート。
その視線の先で、ダオは、溺れるほどの冷や汗に包まれていた。
(ケタが違う……こ、これほどまでの超越者だったのか……)
――そこでゴートは、
この場に集まった全員に向けて、
「さて、質疑応答も終わったことだし、さっそく本題に入ろう! これからの魔王国の政策を発表する! 今後の魔王国の政策は……」
そこで、いったん区切る。
もったいぶる。
間をためて、
ゴホンと、少し大げさにセキをしてから、
すぅっと息をすって、
「アルティメット富国強兵だ!」
「「「……は?」」」
全員の頭にハテナが宿る。
そんな彼らに、ゴートは言う。
「これから魔王国は発展する! 究極にな!」
こうして、
魔王国の改革がはじまった。
世界がまた変化していく――
――一方、そのころ……
★
ラムドが魔王国で、今後の政策発表をしていた頃、
その裏では、ようやく、
……ようやく!
冒険者試験の一次が始まろうとしていた!
――これから一次試験が行われる『ソコ』は、
ローマ劇場を彷彿とさせる、収容人数1000人ほどの、
かなり大きな半円形ホールだった。
時間ギリギリに、セン・アダム・シューリの三名が会場の扉を開いて中に入ると、そこには、既に、300人近い受験生が客席に腰をかけていた。
裏からまわって、あいている席に腰をかけると、
ちょうど、そこに、ゼンたちがいた。
センは、シグレの隣に腰をかけて、
「やあ、隣いいかな」
「……ぇ、あ……うん、別にええけど」
シグレがそう返事をしたのを聞いて、
センは、にこやかに、
「ありがとう」
などと言いながら、心の中では、
(……どうやら、ペルソナXなら、俺の姿は隠せるみたいだな)
シグレの目がどういう性質のものなのか分からなかったので少し不安だったセン。
ペルソナXは、世界進化後に獲得した知識や技術をフル投入して、かなり気合いを入れて創った究極超神器なので『まあ、大丈夫だろう』とは思っていたが、シグレの目は謎すぎるので、一抹の不安はあった。
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