無為な対話。

無為な対話。


「押しつけてんのはてめぇだろ!」


 パルシュの叫びに、UV9は笑って答える。


「それが出来るだけの力があるからね。私が言っているのは、思想を他者に押しつけるための努力も準備もしていなナマケモノが、偉そうに生意気なことをほざくなってことだよ。『我(が)』を通したければ、それに見合った力がいる。君たちにはそれがない。なのにイキっている。かなり不快だね……ムカついちゃったから、少しだけ荒々しく、その絶対的な事実を、その身に理解させてあげよう」


 言ってから、UV9は、全身にオーラを充満させる。


 そのあまりの覇気に、全員が息をのんだ。

 凄まじい強さ。

 圧倒的な存在値。


 ――そこで、モナルッポが、


「超魔王ウルトラバイオレット・ゼロゼロナイン……一つだけ質問だ。あんたが神になる目的を、俺はまだ聞いていない。巨悪を貫いて、多くの犠牲を出して、そして神になったとして、あんたは『その先』になにを求める?」


 必死の問いかけだった。

 そこが何よりも重要だと感じたから。

 だから、絶対に解答を聞かなければいけない。


「もし、あんたが、『未来の人類を守るための柱』となってくれるのなら、神を目指す理由の一つに、そこんところを加えてくれるというのなら……これから生じるであろう無数の犠牲を覚悟で、あんたに傅(かしず)こう」


 モナルッポの発言に、セレーナたちが目を見開いた。

 しかし、何も言わない。

 一考に値する提案だと思えたからだ。


 モナルッポは、きちんと、人類の未来を考えている。

 この場で、『闇雲に闘いだけを求める』のはゲーム的な勇者の愚行であって、ただしい王の姿ではない。

 もし、『人類を守る神』として生きてくれなくとも、可能性があるのなら……

 あるいは、『世界の半分』が条件でもいいから、可能性を……


 人類の未来が残るのなら、それが、かりに半分だけでも、もしくは10分の1でも、考える余地はある。

 それほどに超魔王ウルトラバイオレット・ゼロゼロナインは強く、

 モナルッポ・スピアーズ・ミルトリスはただしく『人の王』だった。


 王としての『真摯』を貫くモナルッポに、UV9はいう。


「神になった後は、神々をくらい、神を超えた神を目指す。その領域に辿りつけたら、さらにその上を求める。全てを飲み込んで、私は『神の神』を、または、その果てだけを、ただひたすらに目指し続ける。私の欲望が満たされる事はない。私はただ求め続ける。君達は、ただ、そのエサになればいい」


 UV9の発言に、この場にいる全員が絶句した。

 UV9は続けて、


「自己主張する面倒なエサはいらない。将来の人類は、知能なき肉となる。鉱石や薬草と同じさ。採取されて、すりつぶされて、使用されて終わり。それだけ」


「……た、ただ求め続けたって、何もならないだろう……」


 モナルッポは肩を震わせながら、


「なんのために求めるのかが固まっていなければ、ただ虚しくなるだけ――」


「そうかもしれない。けど、そうじゃないかもしれない。いまのところ、誰にも答えはわからない領域だ。憶測で真理を断定しちゃいけないね」


「……」


「神の神になり、その最果てを超えて、さらに、もっと向こうへ、もっと、もっと……その過程で、私は、何か『答え』を得るかもしれない。真理と呼ばれる大きな何か。得られるのであれば、得ておきたいところだね。ただ、答えを得られなかったとしても、別に問題はない。どうせ、命など、俯瞰(ふかん)で見れば、うたかたの夢でしかない。だから、何もなかったとしても、私は、ただ上を目指し続ける。そうやって膨らみ続けていくのが私の目的だ。……さて、そろそろ会話は終わりにしよう。見せてあげるよ。神の神を目指している者の力を」


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